斬新な防御法 ミツバチは動物の糞を使ってスズメバチを撃退する

動物
(Heather R. Mattila/University of Guelph)

ミツバチを研究しているグループは、ベトナムで飼育されているミツバチが、珍しい方法を使ってスズメバチを撃退していると報告しています。

 

花粉の媒介者として欠かせない昆虫であるミツバチは、天敵であるスズメバチを集団で囲い込み蒸し焼きにできます。

しかしこの戦略は常に成功するわけではなく、巣が数匹のスズメバチによって壊滅してしまうこともしばしばです。

新しく確認された動物の糞を使った防御法は、ミツバチがスズメバチに対抗するために獲得した適応です。

 

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スズメバチの撃退に動物の糞を使うトウヨウミツバチ

 

アメリカやカナダの生物学者チームは、今年の8月、ベトナムの養蜂家のもとを訪れ、ミツバチの奇妙な動きについて調査を行っています。

研究者の一人は過去にベトナムを訪れた際、ミツバチの巣箱の入り口に動物の糞が塗られている現象を耳にしていました。

一般的にミツバチは清潔な生き物と考えられており、蜂蜜やローヤルゼリーといった、人間が口にするものの近くに動物の糞が存在するという事実は研究者を驚かせました。

 

調査には72人の養蜂家が協力しました。

5人の養蜂家はセイヨウミツバチを飼育しており、これらの巣箱には動物の糞が確認されませんでした。

一方、残りの67人が飼育しているのはトウヨウミツバチで、このうち63人が、巣箱の入り口に動物の糞が塗られているのを見たことがあると報告しました。

養蜂家は平均で15のコロニーを管理しており、巣箱の約74%で糞が見られました。

 

研究者はミツバチが糞を塗る理由を知るため、巣箱を観察しその動きを記録していきました。

結果ミツバチは、天敵であるスズメバチ(Vespa soror)が襲来した直後に、糞を巣箱に塗っていることがわかりました。

糞は近くにある鶏舎や肥料の山から持ち込まれ、時には石鹸かすや人間の尿も利用されました。

 

動物の糞をくわえたミツバチ (Heather R. Mattila/University of Guelph)

 

巣箱に糞が塗られている場合、スズメバチがやってくる確率は通常の半分未満になり、また仮に巣に到達しても、攻撃の時間は従来よりも94%少なくなりました。

これは糞の匂いが、スズメバチの行動に影響を与えていることを示唆しています。

 

スズメバチは、ミツバチの巣を襲撃する際、最初に偵察部隊を送り込み、独特の匂いを放つフェロモンでマーキングします。

そしてやってきた戦闘部隊が巣を高い確率で殲滅します。

しかしベトナムのミツバチは、戦闘部隊が襲来するまでの間に防衛体制を整えることを覚えました。

PLOSE ONEに掲載された研究の著者の一人である米国ウェルズリー大学のヘザー・マティラ氏は、「ミツバチが動物の糞を利用しているという事実に最初はショックを受けた」と振り返りつつ、「この研究は、ミツバチのもつ、捕食者から身を守るための注目すべき特性を示している」と述べています。

 

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糞を使った撃退方法はセイヨウミツバチには見られない

 

スズメバチがなぜ動物の糞を嫌い、またミツバチがどのようにしてそれを知ったのかはよくわかっていません。

他の昆虫の種には、捕食者から逃れるため、動物の糞を体に塗りつけるものもいます。

研究者はスズメバチが糞を嫌う理由について、「生き物は単に糞を汚いものとみなしており、それが攻撃に対する抑止力になっている可能性がある」と指摘しています。

 

糞を巣箱に塗るトウヨウミツバチの行動はベトナム全土に広がっているだけでなく、中国、タイ、ブータン、ネパールでも報告されています。

一方で、セイヨウミツバチはスズメバチに対し依然脆弱なままです。

昨年から今年にかけて、アジア原産のオオスズメバチが北アメリカに初めて上陸し、地元のセイヨウミツバチに被害を与えました。

トウヨウミツバチはスズメバチとの戦いの末に、糞を使った撃退法を編み出しました。

しかしセイヨウミツバチには、未知の敵であるオオスズメバチに対抗する術はありません。

マティラ氏は、「トウヨウミツバチが糞を使って身を守れることは確認できたが、他のミツバチが糞を利用しているという証拠はない」と説明し、「セイヨウミツバチには、防御を進化させる機会がなかった」と述べています。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

ミツバチがどうやってスズメバチの嫌いなものを学習したのか不思議だね

かなで
かなで

養蜂場にはスズメバチを追い払う人が常駐してるんだって

ふうか
ふうか

ミツバチは人とスズメバチの戦いを観察していたのかもしれないな

 

 

 

References: CNN,The Guardian,University of Guelph