愛玩動物として人気の猫は、野生生物を狩ることで、生態系に大きなダメージを与えています。
飼い猫や野良猫による狩りは、毎年野生生物の命を、イギリスで1億匹、オーストラリアで2億匹、アメリカに至っては数十億匹奪っていると推定されています。
しかし多くの飼い主にとって生態系を乱す猫の行動は大きな関心事ではなく、また現時点では効果的な解決法もないため、この問題についてはほとんど見過ごされているのが現状です。
イギリスの研究者は、猫を飼っている飼い主を対象に興味深い実験を行っています。
猫の狩猟本能は、食べる餌によってある程度コントロールすることができます。
肉が豊富に含まれている餌は狩りの回数を減らす
外出する猫は、鳥やネズミ、トカゲといった生き物を襲います。
これらの獲物の中には自然界での数が少なくなっているものもあり、一部の国や地域では、猫が生態系に及ぼす影響について激しい議論が交わされています。
猫の狩りを防ぐ方法としては、鈴をつけたり、相手から視認しやすくするための首輪などが使われますが、実際の効果については不明な部分もあります。
英国エクセター大学の研究チームは屋外での猫の行動を理解するため、飼い主の協力の元、実験を行っています。
参加したのはイングランド南西部の219世帯、計355匹の猫で、いくつかのグループに分けられた後、研究者が求める環境でそれぞれ12週間を過ごしました。
飼い主はその間、自分の猫が外出した回数や、捕らえた獲物の数などを記録していきました。
実験前と比べ、最も狩りの回数が減ったのは、「肉が豊富で穀物を含まない餌」を食べたグループでした。(-36%)
このグループの猫は、肉由来のタンパク質を多く含む餌を与えられていました。
次に狩りの回数が減ったのは、「毎日5~10分遊んだ」グループでした。(-25%)
ここでの飼い主は、糸に垂らしたネズミのおもちゃを使って、毎日猫と5分以上遊びました。
一方、狩りの回数が増加したのは、「パズルフィーダーを使って餌を食べた」グループでした。(+33%)
パズルフィーダーは迷路状の構造などを施した特殊な餌入れで、猫に狩りの疑似体験をさせながら餌を与えることができます。
しかしパズルフィーダーは、猫によっては餌を得るのに苦労したり、無関心だったりする場合があります。
このグループでみられた狩りの増加は、日々の食事のストレスに起因している可能性があります。
肉を多く含む餌を与えるか、毎日の遊びによって猫の狩りを減らすことができる (Martina Cecchetti/Current Biology)
狩りの回数が変わらなかったのは、「首輪に鈴をつけた」グループでした。
首輪や鈴は、猫の存在を小動物に知らせる効果があると考えられています。
しかし実験では、襲われた野生生物の数に大きな変化は認められませんでした。
唯一、相手が鳥の場合に限っては、首回りに装着したカラフルなカラー(Birdsbesafe)が効果的でした。
このケースでは、鳥の犠牲が42%減少しています。
実験を行ったエクセター大学のロビー・マクドナルド氏は、「猫のニーズや欲求を満たせば、彼らが狩りに出ようと考えるのを未然に防ぐことができます。私たちの研究は、飼い主が完全に非侵襲的、非制限的な方法で猫の行動を変えられることを示しています」と述べています。
肉を多く含む餌が、なぜ狩りを減少させるのかはよくわかっていません。
研究者は、一部のキャットフードに含まれている植物由来のタンパク質に理由があると考えています。
猫はアミノ酸などの特定の栄養素を摂取する必要がありますが、植物由来のキャットフードでは十分な量を満たすことができず、それが狩りへの欲求につながっている可能性があります。
毎日の遊びや肉を含む餌など、飼い主は猫の特性を理解した世話を心がけることで、猫自身の幸せだけでなく、周囲の自然に住む野生生物の命も守ることができます。
マクドナルド氏は、猫の行動が周囲の生き物に与える影響について、「殺すのはおそらく少数の猫ですが、猫の数は非常に多いためその重要性が低下することはありません。住宅地の猫の数は、自然の捕食者の数よりもはるかに多いのです」と述べています。
研究結果はCurrent Biologyに掲載されました。
玄関先に獲物を持ってくるのは、猫なりの不満の表現なのかもしれない……
遊びと栄養のある食事で、猫も野生の生き物もハッピーになれるんだね
Reference: The Guardian