なぜ人や動物は眠らなければならないのでしょう。
睡眠時間を削ることができれば、それだけ生産性があがり人生は豊かになります。
ところが現実はそううまくはいかず、睡眠時間はいずれ元通りになります。
全ての生き物には睡眠が必要です。
しかし動物のなかには、極めて短い睡眠しかとらない種も存在します。
睡眠の謎に挑んだ女性医師
睡眠不足は、心臓病、脳卒中、糖尿病などのリスクを増加させるだけでなく、体重増加や集中力の低下など、日常生活にも多大な影響を及ぼします。
睡眠を理解することはより良い人生につながるため、これまでに多くの科学者がそのメカニズムを解明しようとしてきました。
19世紀のロシアの女性医師マリア・マナセイナもその一人です。
睡眠の謎に取り憑かれたマナセイナは、数々の動物実験を行いました。
最初の実験では、子犬を強制的に眠らせないようにして、状態にどのような変化が起こるのかを観察しました。
しかし犬は数日後に死亡しました。
マナセイナはその後、同様の実験をげっ歯類やゴキブリなどに対しても行いますが、結果は全て同じでした。
一連の実験結果は、「どんな生き物であっても睡眠が必要である」という、当たり前ともいえる事実を補強するだけに終わりました。
マナセイナは自著のなかで、「私たちは人生を愛し、可能な限り長く生きたいと思っているが、一生の3分の1、時には半分も睡眠に費やしている」と書きました。
結局彼女は最後まで、動物が眠る理由を解き明かすことはできませんでした。
一日に4分しか眠らないミバエ
動物界には睡眠時間が極めて短い種(ショートスリーパー)が存在します。
そのあまりの短さは睡眠の必要性に疑問を投げかけます。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの生物学者であるジョルジオ・ジレストロ氏の研究チームは、ミバエの睡眠時間に関する実験を行っています。
ミバエは果物を好むハエの種で、通常その寿命は1週間もありません。
ミバエはその短い一生のなかでもしっかりと睡眠をとりますが、その時間は個体によってまちまちです。
実験ではミバエの集団を観察し、一日の睡眠時間を記録しました。
全体の睡眠時間の平均は300分でした。
しかし研究者を驚かせたのは、このうちの6%の個体が、平均して72分しか寝ていないことでした。
なかには一日の睡眠時間が4分のミバエもいました。
彼らは睡眠時間が非常に短いにもかかわらず、他のミバエと同じくらい生きました。
ジレストロ氏はこれらの結果から、「睡眠は人間が考えているよりも、それほど重要ではないのかもしれない」と述べています。
どんなショートスリーパーでも睡眠は必要
ショートスリーパーの動物はミバエ以外にも存在します。
ドイツのマックスプランク鳥類学研究所のニールス・ラテンバーグ氏の研究チームは、2016年に、ガラパゴス諸島に生息する「オオグンカンドリ」の睡眠時間を調べる実験を行っています。
実験ではオオグンカンドリに科学機器を取りつけ、飛行中の脳の電気信号を記録しました。
その結果、飛行中のオオグンカンドリは、ほぼ睡眠状態にあることが明らかになりました。
オオグンカンドリの脳の半分は、飛行中であっても活動を休止していました。
彼らの一日の平均睡眠時間は42分でした。
ラテンバーグ氏は、今後眠らない動物が発見されるかどうかについて、「何でも起こり得る」としながらも、「睡眠の研究で明らかなのは、どんなショートスリーパーであっても、最低限の睡眠量を必要としていることだ」と述べています。

睡眠はどんな生き物にとっても欠かせない活動なんだね

眠い時には寝るのが一番……
Reference: LiveScience