英国ブリストル大学の研究者は、最新のコンピューター技術を使って、恐竜の脳をデジタルで再構築しています。
今から2億500万年前の三畳紀に生息していた「テコドントサウルス (Thecodontosaurus)」の化石は、1834年にブリストルの採石場で発見されました。
「ブリストル恐竜」とも呼ばれるテコドントサウルスは、現在の大型犬ほどの大きさをした草食恐竜で、後の時代の代表的な草食恐竜である、ブロントサウルスやディプロドクスのように四足歩行をしていたと考えられています。
この恐竜が何を食べまたどんな生活をしていたのかは、長い間議論の的でした。
新しい研究は、テコドントサウルスが、雑食性で二足歩行の恐竜だったことを明らかにしています。
脳の形状から恐竜の体の特徴がわかる
ブリストル大学のアントニオ・バレル氏を中心とした研究者グループは、テコドントサウルスの生態を理解するため、化石に対してCTスキャンを実施しました。
この手法は、化石を傷つけずに骨格をコンピューター上に再現することができます。
研究者は、テコドントサウルスの頭蓋骨を3Dモデル化し空洞部分を計測したうえで、脳と内耳のレプリカを作成しました。
そして作られたバーチャルな脳を、恐竜の子孫である鳥や、現代の恐竜とも言えるワニの脳などと比較し、似ている個所や異なる部分を特定していきました。
分析の結果、テコドントサウルスの前庭小脳が、比較的大きなものであったことが判明しました。
前庭小脳は目の動きや体のバランスに関連した脳の部位で、発達している動物は、視線を安定させたまま二足歩行で動くことができます。
二足歩行する生き物は三畳紀にも存在しますが、そのほとんどが肉食恐竜か鳥類です。
前庭小脳の発達は、テコドントサウルスが四足ではなく二足歩行の恐竜であり、また植物だけを食べていたわけではない可能性を示唆しています。
バレル氏は、「この脳の構造は、テコドントサウルスが比較的機敏であり、高速で移動しながら安定した視線を保っていたことを表している」と述べています。
テコドントサウルスの頭蓋骨と3Dモデル。Aが実際の化石でDが3Dモデルの脳 (Antonio Ballell/Zoological Journal of the Linnean Society)
3Dモデルは歯も詳細に再現しました。
歯の形状は、テコドントサウルスの食事が主に植物であったことを示しました。
しかし研究者は脳の構造から、この恐竜が肉も食べていたと推測しています。
バレル氏は、「テコドントサウルスが住んでいた島々には、爬虫類、小型哺乳類、昆虫、その他の節足動物が豊富に生息しており、これらは非常によいサプリメントだったかもしれない」と述べています。
内耳の形からは、テコドントサウルスの聴力が優れており、周囲の音に対し敏感に反応できたことが明らかになっています。
テコドントサウルスは、他の動物が発する音を聞き分け、それを狩りに利用していた可能性があります。
研究者の一人であるブリストル大学のマイク・ベントン教授は、「テコドントサウルスにはまだ調査されていない多くの質問がある」としながらも、「新しいテクノロジーによって、この小さな恐竜がどのように生きていたのかを詳しく知ることができた」と述べています。
研究結果はZoological Journal of the Linnean Societyに掲載されました。

化石から脳の形がわかるなんてすごいねー

他の恐竜の調査でもCTスキャンが使われるようになってきてるね
References: University of Bristol,The Guardian