オーストラリアの科学者グループは、固有種であるカモノハシの生息地域が、ここ30年で22%以上失われたと報告しています。
カモノハシは平たいくちばしを持つ卵生の哺乳類で、主にオーストラリア東部の河川に生息しています。
個体数は減少傾向にあるとされていますが、長期的な観測が不足しており、現在の正確な数は不明なままです。
科学者グループは今回の調査結果から、カモノハシを絶滅危惧種として扱うべきだと指摘しています。
開発によって狭められているカモノハシの生息地
ニューサウスウェールズ大学のリチャード・キングスフォード氏を中心としたグループは、カモノハシの現状を理解するため、入手可能なデータと記録を使って、生息地と個体数の推移を分析しました。
その結果、1990年以降、生息地の面積がオーストラリア全体で22.6%失われていたことが明らかになりました。
この面積(199,919㎢)は、タスマニアのほぼ3倍の大きさに相当します。
生息地の縮小度合いは州によって異なりました。
最も多くの面積を失ったのはニューサウスウェールズ州の32%で、以下、クイーンズランド州の27%、ビクトリア州の7%と続きます。
カモノハシが川から追い出された主な原因は、ダム、土地の開発、汚染、犬やキツネなどの捕食者、干ばつなどでした。
またマレー・ダーリング盆地などの、人の手によって作り変えられた河川地域では、特に個体数が減少していました。
カモノハシは水辺に巣を作り、そこを拠点として昆虫や魚などを食べます。
ダムや土地の開発は、カモノハシの自然な生活を脅かし、存続を難しくさせます。
調査結果は、保全状況の評価を再考させるのに十分なものです。
現在カモノハシはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて「近危急種」に分類されています。
これは今すぐにではないものの、生息地を失えばいずれ絶滅してしまう動物に適用される分類です。
しかし実際のカモノハシは、すでに絶滅への道を歩み始めている可能性があります。
キングスフォード氏は、「ダムや干ばつなどで川が劣化し続ければ、カモノハシは個体数の回復を待たずに消えてしまうかもしれない」と述べています。
研究に参加したオーストラリア保護財団、WWFオートスラリア、およびヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルは、連邦政府とニューサウスウェールズ州に対し、カモノハシを「絶滅のおそれのある種」にリストアップするよう求めています。
オーストラリア保護財団のポール・シンクレア氏は、「カモノハシを絶滅危惧種に指定することは、この象徴的なオーストラリアの生き物を保護し、回復に導くための第一歩だ」と述べています。

哺乳類なのに卵を産むとは珍しい……

カモノハシのオスは毒も持ってるんだよ!
References: ABC News,The Guardian