鳥の世界にも流行がある?カナダに生息する「ノドジロシトド」の鳴き声がここ20年で大きく変化

動物
(Shenandoah National Park/Flickr)

カナダや北アメリカに生息するスズメ科の鳥「ノドジロシトド (White-throated Sparrow)」は、メロディアスに歌う鳥として知られています。

歌の最終部分は3連音で構成され、カナダでは一連の鳴き声を「オーマイ、スウィート、カナダ、カナダ、カナダ」と訳し親しんでいます。

しかしここ最近、ノドジロシトドの歌謡界に大きな変革の風が吹いています。

耳になじんできたラストの3連音は、いつのまにか2連音に変わりつつあります。

 

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西から東へ3,000km、広範囲に及ぶノドジロシトドの歌の変化

 

カナダのノーザン・ブリティッシュ・コロンビア大学の鳥類学者であるケン・オッター教授は、1990年代後半にカナダ西部に引っ越してきたとき、地元のノドジロシトドの歌がこれまでに知られているバージョンとは異なることに気づきました。

初め、歌の最終部分が2連で終わるパターンは、鳥類にも確認されている「方言」のようなものだと推測されました。

しかし市民科学者の協力により、これが一地方の方言ではなく、カナダやアメリカの生息地全体に及んだ現象であることがわかりました。

 

オッター教授は鳴き声の変化の広がりについて、「私たちが知る限りこれは前例のないことである」と述べています。

 

(ラストの3連音(ピーピピ、ピーピピ)が、2連音(ピーピ、ピーピ)に変化していることがわかります)

 

研究では、鳥の鳴き声をアップロードできるeBirdやXeno-Cantoといったサイトで市民科学者に協力を募り、1950年代以降のノドジロシトドの歌の変化について分析を行いました。

2004年頃のデータでは、2連音の鳴き声が確認されたのはカナダ西部のアルバータ州のみで、他の地域の鳥は従来の3連音の歌を歌っていました。

ところが10年後の2014年になると、アルバータ州だけでなく東のオンタリオ州のノドジロシトドまで2連音を採用するようになりました。

さらに2019年には、3連音から2連音への変化が、カナダでの生息地の限界点であるケベック州や北米地域にまで広がっていたことが確認されました。

 

歌の変化の広がり。青丸が2連音で赤丸が3連音 (Ken Otter/Current Biology)

 

歌の変化という現象は、西から東へ、20年で3,000km以上の距離を移動しました。

 

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ノドジロシトドの歌がなぜ変化し、またどのように各地に広がっていったのかについてはよくわかっていません。

追跡装置を使った実験では、ノドジロシトドが越冬地であるロッキー山脈の東側で、新しい歌を歌っていたことが明らかになっています。

ノドジロシトドは越冬地でメロディを獲得した後、カナダに持ち帰った可能性があります。

オッター教授は、2連音の鳴き声はとてもユニークであるため、オスがメスを引き付けるうえで重要な役割を持っているかもしれないと指摘し、「メスが典型的でない歌を好む場合、新しいタイプの歌はオスにとって大きな利点がある」と話しています。

 

研究結果はCurrent Biologyに掲載されました。

 


 

 

かなで
かなで

鳥のメスのほとんどは住んでいる地域で歌われる歌を好むみたいだよ

しぐれ
しぐれ

3連音から2連音の変化がメスのハートを揺さぶるのかもしれないね

 

References: ScienceAlert, ScienceNews