アメリカ最大のユダヤ人団体であるAnti-Defamation League(ADL―名誉毀損防止同盟)は、最近行った調査で、オンラインゲームをプレイする成人の74%が何らかの嫌がらせを受けた経験があると発表しました。
アメリカの1000人以上のゲーマーを対象に行われた調査は、現在世界中でプレイされている人気ゲームの多くで日常的な嫌がらせが横行していることを明らかにしています。
嫌がらせの種類は多岐に渡るもので、中にはプレイヤーの日常生活を脅かす危険があるものも含まれています。
世界のゲーム人口と市場規模が大きくなり続けている一方で、こうしたオンラインでのトラブルに関してはこれまであまり真剣な議論が交わされる機会はありませんでした。
ADLは今回の調査結果が、ゲーム業界をよりよいものにするための理解を提供するものだとしています。
オンラインでの嫌がらせは実生活にまで及ぶ可能性がある
ADLはオンラインでの嫌がらせの種類について詳細な報告をしています。
嫌がらせを受けた経験を持つ74%のうちの64%が、身体的な脅威、ストーキング、持続的な嫌がらせ、晒し行為などを受けています。
最も多くの嫌がらせが起こるゲームには、DOTA2、Counter-Strike: Global Offensive、Overwatch、PlayerUnknown’s Battlegrounds、 League of Legendsなど、現在世界中でプレイされている有名なタイトルが挙がりました。
嫌がらせは、プレイヤーの人種や能力、宗教や性別、または性的指向といった多岐にわたるものを対象にしており、特に女性プレイヤーの35%は、性別や性的指向に基づいた嫌がらせを受けた経験を持っています。
さらに調査結果は、オンラインでの嫌がらせ行為が及ぼす影響がその場だけのものとは限らないことも明らかにしています。
嫌がらせを受けたプレイヤーの23%は対象のゲームの中での行動をより慎重にしたり、またはまったくプレイしなくなりました。
15%のプレイヤーは、嫌がらせを受けたことによって自分の社会性が低下したと感じ、孤立を訴えました。
そしてさらに驚くべきことは、嫌がらせを受けたプレイヤーの10人に1人が憂鬱を感じたり、自殺願望を抱いたりしたことです。
こうした一連の結果は、オンラインゲームが単なる遊びであると同時に、プレイヤーの心理や実生活に大きな影響を与える可能性があることを示しています。
調査では、嫌がらせを受けたプレイヤーの12%がゲーム会社に連絡をし、5%が警察に電話をかけています。
しかしこの数字は、嫌がらせを受け実害を感じているプレイヤーの割合からするととても少なく感じざるを得ません。
ADLは嫌がらせの対策として、ゲームの開発者や販売元が包括的なアプローチを取るべきだと提案しています。
また政策においても、オンラインでの嫌がらせに対する法案の策定や強化などが必要だとしています。
今回のADLの調査報告はオンラインゲームの負の部分を示したものですが明るいニュースもあります。
それは調査に協力したプレイヤーの88%がオンラインゲームから何らかの恩恵を感じていることです。
彼らはオンラインゲームで友達を作ることや他のプレイヤーを助けることなどによって良い社会的経験を感じていると報告しています。
彼らにポジティブな経験を感じさせたゲームは――興味深いことに――多くのプレイヤーが嫌がらせを受けたと報告したタイトルとほぼ同じものでした。
世界中の人が集うオンラインゲームの世界には様々なプレイヤーが存在しています。
そして勝ち負けを競うゲームが主流である以上、何らかの負の感情が(特に負けたプレイヤーに)生まれてしまうのも仕方のないことかもしれません。
ADLの調査は、オンラインでの嫌がらせ行為がそれを受ける人によっては深刻なものになることを明らかにしました。
お互い顔が見えなくとも画面の向こう側には生身の人間がいます。
自分がしてほしくないことは相手にもしない――そんな些細な心がけとちょっとした想像力こそ、オンラインゲームをさらに豊かな経験にする秘訣です。
Source:ADL