メキシコの国立人類学歴史研究所(INAH)は、ユカタン半島沖の海底から、マヤ人を奴隷として運んでいた交易船を発見したと報告しています。
船は2017年に、ユカタン半島の北西部に位置する町シサルの沖合で発見され、記録が残っているスペインの交易船「ラ・ウニオン (La Unión)」であるとされていましたが、特定までには3年の月日がかかりました。
ラ・ウニオンは1861年9月19日、キューバに向かう途中で沈没し、乗員乗客あわせて140人が犠牲になりました。
貨物として扱われキューバに運ばれたマヤの奴隷
この時代は、ユカタン半島のマヤの先住民と、入植者であるヨーロッパ人との間で激しい争いが起きていました。
植民地化によって労働力を搾取されていたマヤ人は、1847年から1901年までの間、長きにわたって抵抗を続けました。
「ユカタンのカースト戦争」と呼ばれるこの争いは、ヨーロッパ人の奴隷調達の機会を増やしました。
鎮圧されたマヤ人は捕らえられ、キューバの大規模農場へ向けて奴隷として“出荷”されました。
メキシコの奴隷制は1829年に廃止されています。
しかし実際には法は守られておらず、奴隷制は依然として、ヨーロッパ人の富の形成に大きな役割を果たしていました。
ラ・ウニオンが沈没する数カ月前、メキシコの最初の大統領で先住民出身のベニート・フアレスは、マヤ人を奴隷として扱うことを禁止する発令を出しています。
沈没船がこの時代の奴隷船であったという事実は、歴史の理解に新たな視点を加えるものです。
INAHは、「奴隷船の特定は研究者にとって大きな意味がある」と述べ、「これはメキシコの不吉な過去を物語るものである」と強調しています。
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— INAHmx (@INAHmx) September 16, 2020
Descubierto en aguas de Sisal, Yucatán, el pecio del vapor “La Unión” fue reconocido luego de tres años de investigación, como el primer naufragio esclavista de mayas en México.
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ラ・ウニオンは、1854年にハバナに作られたスペインの会社が保有していた蒸気船で、シサル、カンペチェ、ベラクルス、タンピコの4つの港を行き来していました。
運んでいたのは、主に木材や繊維、革で、裕福な旅行者も一緒に乗せていました。
一方で、マヤの奴隷は「貨物」として記録され、狭く不衛生な空間に押し込まれキューバに連れていかれました。
ラ・ウニオンは1855年から沈没までの間、毎月25~30人のマヤ人をキューバに運んでいたと推定されています。
INAHの考古学者は、「捕獲されたマヤの戦闘員はキューバに送られ、そのほとんどが戻ってこなかった」と述べ、「奴隷は仲買人に25ペソで売られ、仲買人はハバナで男性を160ペソ、女性を120ペソで転売した」と説明しています。
ラ・ウニオンは砂に覆われた状態で見つかっており、船を構成する多くの部分が残されていました。
ボイラーやホイール部分の残骸は、記録上のラ・ウニオンの特徴と一致していました。
調査から、沈没の原因は、ボイラーの爆発による火事であることがわかりました。
また船内からは、乗客や乗員が使用していた瓶やガラス、陶器、真鍮製のカトラリーなどが見つかっています。
地主になれるとだまされてキューバに連れていかれたマヤ人もいたみたい
奴隷は記録の上では貨物扱い……歴史の闇を感じずにはいられないな
References: INAH,CNN