イギリスの大英博物館に展示されている装飾が施された5つのダチョウの卵は、5,000年近い歴史があるとされています。
この卵はイタリアで発見されたものですが、ダチョウはヨーロッパ原産ではないため、その起源は長い間謎のままでした。
イギリスの研究チームは、卵の再調査を行い、これらが想像していたよりもかなり複雑な背景を持っていることを明らかにしています。
ダチョウの卵は、青銅器および鉄器時代から、ヨーロッパと地中海そして北アフリカの人々の貴重な交易品でした。
古い時代からあるダチョウに関する記述
© The Trustees of the British Museum
英国ブリストル大学とダラム大学のプロジェクトチームは、大英博物館に展示されている5つのダチョウの卵の同位体分析を行い、その起源がエジプト北部のナイル川デルタとレバント(トルコ、シリア、レバノン、イスラエル、エジプトを含む地域)にあることを突き止めています。
ダチョウはヨーロッパ原産ではなくまた捕獲するのが難しい鳥でもあるため、研究者は長い間、この卵を産んだダチョウが野生なのか、それとも飼育されていたものなのかを知りたがっていました。
ダチョウに関する記述はいくつかの遺物から確認することができ、たとえば紀元前9世紀のアッシリア王国の碑文には、王が多数の動物を殺害あるいは捕獲し、ダチョウは宮殿の一区画で繁殖のために飼育されていたと記されています。
また古代ギリシアの歴史家クセノポンは作品の中で、ダチョウの捕獲が極めて難しいことに言及しています。
ダチョウの骨は、過去の文化の痕跡を示す考古学的な場所では滅多に発見されません。
これはダチョウが歴史的にみて、人間の重要な食糧源ではなかったことを意味しています。
装飾が施された卵の起源の調査は、ダチョウの辿ってきた歴史と、古代文明の貿易についての理解につながります。
ダチョウの卵は様々な地域から持ち込まれた貴重な品
© The Trustees of the British Museum
Antiquityに掲載された研究の著者でブリストル大学の考古学者であるタマル・ホドス(Tamar Hodos)博士たちの研究チームは、5つの卵の殻に含まれているストロンチウム、炭素、および酸素の同位体分析を行いました。
集められたデータは、エジプト、イスラエル、ヨルダン、トルコで飼われている現代のダチョウの卵と比較され、その結果、大英博物館の卵は低温、湿潤、高温、乾燥といった様々な気候の地域で産まれたものであることがわかりました。
野生のダチョウは現在ではアフリカの一部の地域にしか生息していませんが、過去には中東、アラビア半島、レバントなど幅広い地域に生息していました。
調査結果は5つの卵のルーツが、北アフリカとレバントに関連していることを示しました。
ホドス博士は、「分析結果で最も驚いたことは、ある地域の卵が別の地域の遺跡で発見されたことである」と述べ、これはダチョウの卵が広範囲に取引されていたことを意味すると説明しています。
分析では、卵が野生のダチョウのものであるかどうかを確認することはできませんでした。
しかし研究チームはこれらが野生のものであり、当時のトレーダーは卵の入手に多大な努力を払ったと考えています。
ホドス博士は、ダチョウは非常に危険な動物であると説明したうえで、この取引に携わった人物は、巣の場所を見つけるだけでなく、そこから卵を盗まなければならなかっただろうと話しています。
大英博物館の5つのダチョウの卵のうち1つは色が塗られており、残りの4つは色と共に表面に装飾が施されています。
装飾は動物、植物、幾何学模様、兵士、戦車などをモチーフにしています。
研究ではこれらの装飾を現代の卵を使って再現しようと試みましたが、残念ながら複製することはできませんでした。
殻を割らずに施された繊細な装飾は、この卵に経済的な価値があったことを示しています。
展示物の卵の一つは、紀元前6世紀のイタリアのエリート層の墓で発見されています。
おそらくダチョウの卵は、当時の有力者の贅沢品でした。
研究者は今後、なぜダチョウの卵が、ダチョウの生息していない地中海地域で人気になったのかを調べていきたいとしています。

いろんなデザインの卵が見つかってるみたいだよ

ダチョウの卵は危険を冒すだけの価値があったということだな