オーストラリア沖の太平洋に不思議な島が出現し話題になっています。
見つけたのは太平洋を航海中のオーストラリア人の2人のカップルで、フィジーに向かう途中のことでした。
海面をすっぽりと覆うその巨大な島は、サッカースタジアム20,000個分の面積を持つ“軽石”で出来た島でした。
下の動画は軽石の島を撮影したものです。広大な大地にみえるものは全て太平洋に浮かんだ軽石でできた島です。
Sailing through Pumice near VaVa’u
船は一時島に飲み込まれ身動きができなくなりましたが、その後何とかコントロールを取り戻し、近くを航行する別の船に対し警告情報を流しました。
2人はこの時の状況について「波は落ち着いていて船の速度は1ノットにまで減速しました。軽石で出来た島は、月明りとスポットライトで見る限りどこまでも遠くに続いていました」と語っています。
しかしこの大量の軽石は一体どこからやってきたのでしょう?
科学者によれば、これは海底火山の噴火がもたらした“自然の恩恵”です。
軽石の島は海洋生物の家であり乗り物。ダメージを受けたサンゴ礁を回復する役目も
突如出現した軽石の島は、8月7日にトンガの近くにある海底火山が噴火した際に出来たものだと推定されています。
軽石は泡状の溶岩が急速に冷えることによって形成され、内部に浮くことができるほどの気泡を有しています。
船の乗組員であるマイケル・ホルトさんとラリッサ・ブリルさんの2人はFacebookに画像を上げ、その軽石で作られた島を驚きをもって伝えました。
島から採取した軽石を記録するラリッサさん Credit:Sail Surf ROAM,Facebook
二人は採取した様々な大きさの軽石を、オーストラリアのクイーンズランド工科大学の科学者に送りました。
軽石の島の発見の報を聞き調査を開始した、クイーンズランド工科大学の地質学者スコット・ブライアン氏は、軽石の島は数十億の海洋生物の一時的な家になりうると話します。
島に付着したフジツボ、サンゴ、カニ、カタツムリ、及びワームを含む海洋生物はグレートバリアリーフを補充するための潜在的なメカニズムになります。
ブライアン氏は軽石で作られた島は過去20年の間にいくつも存在していたと述べます。
5年に一度のペースで出現するこうした軽石の島は、通常人の目に触れることのない海洋の真ん中で起きる現象で、その表面はまるで陸地のように広がっている、とブライアン氏は説明しています。
ブライアン氏は過去の研究から、軽石の島が多くの海洋生物をグレートバリアリーフにまで連れていくと話し、島を「これは海洋生物にとっての家であり、乗り物である」と表現しました。
島は1兆個以上もの軽石で出来ていて、現在はフィジーに向かって西に流れています。海流にもよりますが、オーストラリアの海岸(グレートバリアリーフ)に到着することも予測されています。
海洋学者たちは、軽石の島とそこに付着した生物によって、近年壊滅的な被害を受けているグレートバリアリーフの再生が進むことに期待を寄せています。
グレートバリアリーフのサンゴはここ数年、大きな被害が報告されています。
海水温度の上昇やそれによる生態系の乱れなど様々な要因が考えられますが、火山の噴火によって出来た軽石の島とそれに付着する海洋生物によってサンゴの楽園が息を吹き返す可能性が出てきました。
壊滅的なサンゴの被害に対し、海底火山がちょっとだけ手助けしたようにも見える軽石の島の存在は、まさに海の生命の神秘を物語っています。
References:BBC,The Guardian