増え続けている人類にとって、食料の安定的な確保は大きな課題です。
しかし現在、生産される食料のうち一定の割合は、人間の胃袋におさまることなく捨てられています。
食料の生産には多大なエネルギーが必要で、それらは地球の温度を上昇させる温室効果ガスを生み出します。
人類が現在のペースで食料を無駄にし続けた場合、地球温暖化に歯止めをかけるのはますます困難になります。
先日国連が公開した食品廃棄物に関するレポートは、貧富の差にかかわらず、多くの国で食料が捨てられている実態を明らかにしています。
人類は年間で、約10億トンもの食料を無駄にしています。
全食料の17%は無駄に捨てられている
国連環境計画(UNEP)は3月4日、「Food Waste Index Report 2021」と題した、食品廃棄に関する報告書を発表しました。
食品廃棄が世界に与える影響についての過去の研究のほとんどは、少数の国のデータに依存していました。
今回のUNEPのレポートは、高所得国から低所得国までを幅広くカバーした、これまでで最も包括的な分析結果となります。
Our 🆕 #FoodWasteIndex Report📖 with @WRAP_UK finds that food waste is double previous estimates at consumer level ➕ global food waste constitutes 17% of food available for human consumption.
— UN Environment Programme (@UNEP) March 5, 2021
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まず食品廃棄物の量は2019年、世界でおよそ9億3100万トン発生しました。
このうち61%(5億7000万トン)が家庭からの廃棄物で、残りの26%が外食産業、13%が小売からのものでした。
家庭からの食品廃棄物の量は、単純計算で、1人あたり毎年74kgに相当します。
分析対象となった食品廃棄物は、家庭で発生したもののほかに、レストランやスーパーマーケット、農場などで発生した分も含まれています。
これら全てを合わせると、2019年に生産された食料の約17%が、人々の口に入る前に廃棄されたことになります。
食品廃棄物の発生量に関する分析では、所得グループ間での廃棄物の量に、ほとんど違いがないことがわかりました。
これは広く信じられている、「先進国が低中所得国の食を奪っている」という考えに反するものです。
食品の廃棄は所得にかかわらず、どの国や地域でも一定の割合で発生しました。
またレポートは、食品廃棄が環境に与える影響についても評価しました。
世界の食品廃棄物を「一つの国」とした場合、それが生み出す温室効果ガスの量は、アメリカ、中国に次いで3位となりました。
必要のない食品の生産は、自然と生物多様性を傷つけ、地球の温度上昇を早めます。
世界の食品廃棄物の量は、以前の想定をはるかに上回っています。
その量は、2011年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した見積もりの「2倍以上」です。
現在国連加盟国の多くは、持続可能な社会の構築に向け舵をとり始めています。
食品廃棄に関する項目では、「持続可能な開発目標(SDGs)12.3」があります。
これは2030年までに、小売および消費者レベルでの食品廃棄を、半分に減らすことを目標にしています。
UNEPの事務局長インガー・アンダーセン氏は、「食品廃棄物を減らすことは、温室効果ガスを削減し、土地の汚染と自然の破壊を遅らせ、食料の入手可能性を高め、飢餓をなくし、お金の節約になる」と述べ、目標を達成するためには、「世界中の企業、政府、市民それぞれが、自らの役割を果たす必要がある」と強調しています。
貧しい国でも一定量の食品廃棄があるなんて意外だね
これからは、食べ物を作るのに使われるエネルギーにも関心を向ける必要があるな
References: UNEP,The Guardian