人工的に雨を降らせる技術は半世紀以上前からあり、現在様々な国や地域で“天気の修正”が行われています。
「人工降雨」は英語で「雲に種をまく(cloud seeding)」と書きます。
雨は雲の中の氷から作られるため、人工降雨は文字通り、氷を作る成分を雲に“まく”ことで行われます。
しかし人工的に雨を降らせることができたとしても、自然の雨と区別することは困難であり、その効果には常に疑問がつきまとってきました。
最近行われた人工降雨に関する調査は、少なくともこの技術が“ある程度は”機能していることを明らかにしています。
自然のものと比べればほんの少しの量かもしれませんが、人工降雨は確かに雨を降らせることができます。
人工降雨によって作り出されたオリンピックサイズのプール282個分の雨
レーダーを搭載した観測車両 Credit: Joshua Aikins
アメリカ国立科学財団の支援を受けて行われた研究は、人工降雨によって作られた雨の量を正確に測定することを目的に行われました。
雨が雲の中で作られるには氷が不可欠であることから、科学者は、雲に氷の生成を促進する成分を入れることで雨を人工的に作れると考えてきました。
現在実際に使われている人工降雨の材料には、ドライアイスやヨウ化銀などがあり、これらは通常雲の上空を飛ぶ飛行機からまかれます。
この知識を利用すれば水の供給を増やすことができるとの考えから、オーストラリアなどの国は人工降雨の技術に大きな投資をしている一方、その効果に疑問を投げかける専門家もいます。
研究では、氷を作る材料にヨウ化銀が使われ、地上から高性能のレーダーで雲が発達する様子を追跡しました。
ヨウ化銀を積んだ飛行機は米国アイダホ州西部の上空にできた雲に向かい、レーダーは、雲が氷を作りそれが雨や雪となる様子を観察しました。
一月の寒い日に行われた実験は、67分間で2,330平方キロメートルの範囲に雨と雪を降らせました。
レーダーは人工的な雨と雪を自然のものと区別し、その結果、人工降雨によって282個のオリンピックサイズのプールを満たすだけの量の水が作り出されたことがわかりました。
ヨウ化銀をまかれた雲が地上の観測機器を通過したとき、雪は5分間で0.2ミリ降りました。
この地域の平均降雪量から換算すると、人工降雨によって作られた雪の量は全体の半分を占めます。
研究者は、人工降雨の効果は様々な要因によって変化するが、追加される雨や雪の量は0~50%の間におさまるだろうと結論づけています。
PNASに掲載された研究に参加した、米国コロラド大学ボルダー校の大気科学者カーチャ・フリードリヒ(Katja Friedrich)教授は、「雲に種をまいていなければ雨は降らなかっただろう」と述べ、実験によって人工降雨の作りだす雨の量を数値化できたことを高く評価しました。
フリードリヒ教授は、水不足の解決に人工降雨がどれほど役に立つのかはわからないとしながらも、今回の調査結果は、少なくとも費用対効果の計算に一歩近づく前進だと話しています。
人工降雨への関心の高まりに反して、実際の効果については多くの議論があります。
この方法が非常にうまくいったとしても、それによって増える雨の量は投資に見合わないとする意見もあり、またヨウ化銀には毒性があるため、雲に注入された場合、それによって作られた雨が生物に影響を与えるおそれもあります。
フリードリヒ教授は、「多くの人は、少しの雪を降らせるだけでも、長い目で見れば助けになると考えている」と語っています。
![しぐれ](https://shigurechan.com/wp-content/uploads/2018/10/-デフォ-e1540410061870.png)
飛行機で上空まで行って種をまくなんて効率が悪いと思うけど、実際はどうなんだろう
![ふうか](https://shigurechan.com/wp-content/uploads/2018/10/-デフォ-e1540675418994.png)
気まぐれな天気に左右される人類の苦悩はまだまだ続きそうだな
References: EurekAlert