毎年9月に行われている「ワールドクリーンアップデイ」は、世界中のボランティアが参加し24時間の間にプラスチックごみを拾う国際的プログラムです。
今年は9月21日に実施され、179の地域、延べ2,000万人のボランティアが、ビーチやストリート、森林、公園などでプラスチックごみを回収しました。
プラスチックが地球の環境を汚し生態系に悪影響を与えることは、現代に生きるほとんどの人が理解しています。
太平洋に広がる大量のプラスチックの帯(太平洋ごみベルト)や、海洋だけでなく至るところで発見されているマイクロプラスチックなど、プラスチックが及ぼす環境への影響は計り知れません。
しかしワールドクリーンアップデイのような活動が行われても、プラスチックは回収を上回るペースで生産されそして利用されている現実があります。
プラスチックの環境への影響を少なくする、もしくはゼロにするためには、使う側だけでなくそれを製造する側にも責任が求められます。
世界的な反プラスチックの動きが高まっている中、プラスチックを使った商品を展開している大企業は環境への配慮の姿勢を見せ始めています。
しかしそれが必ずしもプラスチック削減につながるわけではありません。
大企業のプラスチック製品が世界へ及ぼす影響
今回のプログラムで回収されたプラスチックには、まだ分解されず、企業のラベルが判別できるものも含まれていました。
「ワールドクリーンアップデイ」のデータによると、70,000人以上が拾い集めた476,423個のプラスチック廃棄物の中には、自社の製品にプラスチックを利用している世界的大企業の商品が数多く存在しています。
最も多く回収されたプラスチックごみの生産企業は「コカ・コーラ」で、その数は11,732個でした。
次点が「ネスレ」の4,846個、3位が「ペプシ」の3,362個で以下、モンデリーズ、ユニリーバ、マースなどの世界的企業の名前が続きます。
プラスチック汚染のない未来のために活動している組織「BFFP(Break Free From Plastic)」によると、コカ・コーラのプラスチック製品が最も多く回収されたのは2年連続のことです。
コカ・コーラの世界的な人気や販売網などを考慮すると、コカ・コーラ関連のプラスチックごみが多く見つかるのは必然ともいえます。
しかし一部の環境保護活動家は、プラスチックごみが一向に減らない原因には、コカ・コーラ社のような世界的企業の努力が足りない部分もあると考えています。
BFFPのグローバルコーディネーターであるフォン・ヘルナンデス氏は、2年連続でコカ・コーラのプラスチックごみの回収数がトップだったことに触れ、プラスチックごみ削減のためには企業側の努力が欠かせないと話します。
このレポートは、企業が生み出したプラスチック汚染の危機に対処するためには、企業自身が緊急性を持ってもっと多くのことをしなければならないという証拠を提供しています。
ヘルナンデス氏は、現在のプラスチックを回収しリサイクルするという仕組みでは、使い捨てプラスチックを減らし環境への負担を軽減することにはつながらないと指摘しています。
プラスチックのリサイクルの現実と、大企業の環境保護への取り組み
メキシコのコカ・コーラ社が取り組むプラスチック分別の様子 © 2018 THE COCA-COLA COMPANY
現在先進国の多くで、プラスチックを回収、そしてリサイクルするシステムが稼働しています。
しかしBFFPの調査では、実際に世界でリサイクルに回されているプラスチックはわすが9%にしか過ぎず、それ以外は燃やされるか埋め立てられるか、もしくはどこかに捨てられています。
プラスチックは回収したものすべてをリサイクルできるわけではなく、再利用が可能なものから、再生は可能でも(経済的に)実用的でないもの、そして全く再生不可能なもの、といくつもの種類があります。
BFFPは「リサイクルは――それがしばしば主張されているような――魔法の解決策ではない」と述べ、この問題を解決するためには企業が変化しなければならないと強調しています。
コカ・コーラ社は、自社のプラスチック製品が環境を汚していることについてただ傍観しているわけではありません。
コカ・コーラは2018年1月に「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」(日本では「容器の2030年ビジョン」)と題するプラスチック削減目標を設定し、最終的に2030年までに製品に使われるプラスチックを100%リサイクルできるようにするとしています。
しかしこうした企業のプラスチック削減への取り組みを、単なるジェスチャーだと感じる人たちもいます。
国際環境NGOであるグリーンピース・東南アジアのアビゲイル・アギラール氏は、コカ・コーラ、ネスレ、ペプシといった企業のプラスチック削減に対する活動は、誤った解決策に依存したものだと語ります。
これらの戦略はプラスチック汚染の危機を引き起こした時代遅れの使い捨てビジネスモデルを保護するものであり、将来彼らが環境汚染企業のトップに指名されるのを防ぐことにはつながりません。
アギラール氏などの環境活動家は、企業がプラスチックを削減すると宣言する割には、生産そのものにメスを入れないことに違和感を抱いています。
結局のところ、どれだけごみを回収してもそれが新たに生産され続けていれば、プラスチック汚染がゼロになることはあり得ません。
2030年までにプラスチックの100%リサイクルを目指す、コカ・コーラの環境政策担当であるベン・ジョーダン氏は、9月にアトランタで開催されたプラスチック工学会議で次のよう語りました。
世界中にプラスチックが消えることを望んでいる人がたくさんいます。しかしそれが起こらないことはわかっています。
ジョーダン氏はプラスチックの利点を強調し、「私たちはそれらをずっと利用するつもりですよね?」と聴衆に問いかけました。
プラスチックごみを無くすための草の根の活動は素晴らしいことです。
しかしいくらごみを拾ったとしてもそれが新しく作られ続けているのであれば、結局のところいたちごっこになるのは避けられません。
プラスチック自体はとても便利なものです。
地球の環境を守っていくためには、生産する側と使う側の双方が、プラスチックとうまく付き合う方法を学んでいく必要があります。
プラスチックなんか作るのやめちゃえばいいのにー
でも便利なのも確かだしね。結局作る人と使う人の両方が気をつけるしかないのかも
References:WorldCleanupDay,ScienceAlert