生物多様性に富んだ川は、人々にきれいな水と食料をもたらしてきました。
しかし産業革命以降、世界の河川のほとんどは、それ以前と比べ大きく様変わりしました。
開発や水質汚染、ダムの建設、乱獲、気候変動は、河川から固有種の住処を奪い、ごく一部の外来種だけが生き残る環境を作り出しています。
フランスの研究者は、世界中の河川を調査し、その生態系について評価しています。
現在世界の半数以上の川は、人間の活動によって深刻なダメージを受けています。
産業革命以降、世界の川の半数以上で生態系が変化
フランスのトゥールーズ第3ポール・サバティエ大学の科学者を中心としたチームは、河川の生物多様性を評価するため、砂漠と極地を除く世界2500以上の川を調査しました。
河川に関する過去の研究の多くは、そこに住む生物の種類や数に焦点をあてていましたが、今回はより多角的な評価を下すため、種と種の相互作用や、過去200年間の生物多様性の変化なども考慮に入れています。
分析の結果、50%以上の河川で、生物多様性の著しい変化が起きていることがわかりました。
多くの川では、種の断片化と均質化が見られました。
これは環境の変化により固有種が減る一方で、外来種が増えていることを意味しています。
最も影響力のある外来種は、流れの少ない環境に適しているコイ、オオクチバス、ティラピアの3種でした。
産業革命以降、河川では開発が進み、特にダムの建設が、水流を決定的に変化させています。
流れを必要とする従来の魚は、ダムの存在により生きる場所を失い、代わりに持ち込まれたコイやバスなどが幅を利かせるようになりました。
世界の川に侵入している「オオクチバス」 (U.S.Department of Agriculture/Public domain)
また水質汚染も、川の生態系に影響を及ぼす一因でした。
分析では、イギリスのテムズ川やアメリカのミシシッピ川など、人口が多く発展している地域を流れる川ほど、生物多様性が失われていることがわかりました。
一方、200年前とほとんど姿を変えていない川は全体の14%でした。
南アメリカやオーストラリア、アフリカなどの一部の川は、人の手が届かない場所にあるため、生物多様性が比較的維持されています。
しかしこれらの川の魚の種類は、他の川で減少した種を補えるほど豊富ではありません。
種のバリエーションが乏しくなった場合、川は、将来起こり得るさらなる環境変化や気候変動に対しより脆弱になります。
Scienceに掲載された研究の著者の一人である、ポール・サバティエ大学のセバスチャン・ブロス氏は、「分析結果はおそらく過小評価であり、実際には、公式に記録されているよりもさらに多くの種が絶滅している可能性がある」と述べています。
淡水の生態系は、陸上や海洋の生態系と比べ、その重要性が認識されにくい傾向にあります。
川や湖の面積は地球の表面の1%未満でしかありませんが、ここには全ての脊椎動物の4分の1にあたる、17,000種の魚が生息しています。
人間の活動が河川を変容させ続けた場合、川からの恵みは次第に乏しくなっていき、最終的には枯渇してしまいます。
分析では、西ヨーロッパと北アメリカで水質が改善しつつあり、魚の個体数が徐々に戻っていることが確認されています。
しかし科学者は、これを良いニュースと捉えるべきか迷っています。
その理由は、生態系の破壊が、魚の回復を上回る速度で進んでいる可能性があるためです。
ブロス氏は、「生物多様性を人類にとって重要なものとみなすためには、強力な政治的決定が必要である」と指摘しています。
ダムがあると国や地域を問わず、似たような生態系になるんだね
ヨーロッパでは不要なダムを撤去する動きも出てきているようだ
Reference: The Guardian