気候変動に取り組んでいるイギリスのグループは、世界的な人気となっているSUVが環境汚染につながっているとして、自動車メーカーに広告戦略を見直すよう求めています。
SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の定義は各国であいまいですが、共通しているのは、大きなサイズと重量、そして馬力です。
SUVは視認性の高さや頑丈さ、またオフロードでの走行にも適している点などから特に若い世代に人気があり、ここ十数年で急激に販売台数を伸ばしています。
しかし大きな車体は、多くの二酸化炭素も排出します。
世界には既に2億台以上のSUVが存在しており、国際エネルギー機関によると、2010年以降に排出された温室効果ガスのうちSUVの占める割合は、電力セクターに次ぐ第2位でした。
自動車メーカーは広告費の多くをSUVにつぎ込んでいる
イギリスのシンクタンク「New Weather Institute」と、気候変動に取り組む慈善団体「Possible」がまとめたレポートは、SUVから排出される温室効果ガスが、世界の目指す温暖化防止の目標を妨げていると指摘しています。
さらに自動車メーカーの広告戦略について、かつてのタバコ広告のようなやり方で人々を引き付けており、政府レベルでの規制が必要であると訴えています。
レポートによると、2019年に自動車メーカーが広告に費やしたお金は世界全体で355億ドルに達しました。
この全てがSUVの宣伝に使われているわけではありませんが、近年その割合は、他の車種を押しのけて増加しています。
米国フォード社の2016年から2018年までの広告では、初め50%だったSUVとピックアップトラックの比率が、最終的には85%にまで増加しました。
フォードはSUVが好調なことから、2018年に、北米市場での小型車の販売を縮小する計画を発表しています。
(NeONBRAND/Unsplash)
New Weather Instituteの共同ディレクターであるアンドリュー・シムズ氏は、最近のSUVの広告は規制がなかった頃のタバコ広告のようなものであり、実質的に人々に公害を売り込んでいるに等しいと指摘します。
タバコの広告は現在世界のほとんどの国で規制を受けていますが、それまでは町の看板や映画の中などありとあらゆる場所で見ることができました。
どこにでも目につく広告は人々に潜在的な影響を与えます。
シムズ氏は、「私たちは、車によって引き起こされる人間への健康と気候へのダメージについて知っており、今日のようなパンデミックが起こりやすい世界では、特にきれいな空気が必要とされている」と述べ、問題の悪化につながる広告を停止するときが来たと強調しています。
Possibleのロビー・ジレット氏は、「数百万人が気候危機に取り組むために二酸化炭素を削減しようとしているが、自動車と広告業界は汚染度の高い車両を積極的に宣伝している」と述べ、「広告が謳うようなSUVによる自由と脱出は、実際には交通渋滞と大気汚染、そして急激な炭素排出につながっている」と指摘しています。
レポートは全てのSUVの広告を取りやめるよう訴えているわけではなく、炭素排出量の多い一部の車種について禁止を求めています。
またこれらの車の宣伝を抑えることができれば、メーカーは、より小型で燃費のよい車や電気自動車に広告費を向けるようになると指摘しています。
国際エネルギー機関はSUVへの需要が今後も続く場合、2040年までに、1日あたりの石油生産量が200万バレル増えると試算しています。
この増加分の石油によって生み出される温室効果ガスの量は、1億5,000万台分の電気自動車が削減する量に相当します。

昔と比べて今は環境に配慮したSUVも出てきてるみたいだよ

実際CMを見ると乗りたくなっちゃうよねー
References: The Guardian