生態系崩壊の前兆か、車に衝突した昆虫の数が20年で80%減少

自然
Image by Ronny Overhate from Pixabay

イギリスとデンマークで行われた昆虫と車の衝突に関する調査は、過去20年の間に自然界の昆虫の数が大幅に減少している実態を明らかにしています。

英国ケントにある自然保護団体「ケント・ワイルド・トラスト(Kent Wildlife Trust)」は、デンマークの昆虫と車の衝突数の調査に倣い、同様の実験を州内で行っています。

デンマークでの実験は1997年から2017年にかけて行われたもので、同じ道路を同じ速度で走り、車の前方に取りつけた粘着トラップに付着した虫の数を数えるというものです。

実験結果は、衝突した個体数が20年の間に80%減少したことを示し、またこれらの昆虫を主食とするツバメなどの鳥の数も連動して少なくなっていることを明らかにしました。

 

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自然界の昆虫の数は大幅に減少している

 

ケントで行われた実験では衝突した虫の数を数えるために、「スプラットメーター(splatometer)」と呼ばれる、車のナンバープレート部分に取り付ける計測装置が使用されました。

実験には現代の車だけでなく、70年前のヴィンテージカーなど古い車種も加わっています。

2019年6月から8月にかけてボランティアによって行われた700以上の実験は、車と衝突した昆虫の数が、2004年に行われた同様の実験結果よりも50%近く減少したことを示しました。

 

昆虫の数を記録する「スプラットメーター」 Image: Kent Wildlife Trust

 

また実験は、昆虫の減少に車の形状が関わっていないことも明らかにしました。

現代の車は昔の車と比べて虫との衝突が起きやすいとされていますが、実際には車種による衝突数にほとんど差はありませんでした。

これらの結果は、既に自然界には、車に衝突するほどの昆虫が存在していないことを意味します。

ケント・ワイルド・トラストのポール・ティンズレイ-マーシャル(Paul Tinsley-Marshall)氏は、「私たちが見つけた違いは非常に重要である」と述べ、その理由として、昆虫が食物連鎖と地球上の生命の絶対的な基礎であることを挙げました。

そしてケントで見られた昆虫の減少は、他の地域で広く報告されている衰退のパターンを反映したものであり、「これはとても恐ろしいことである」と付け加えています。

 

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昆虫の減少は生態系の崩壊に結び付く

 

ドイツとプエルトリコで行われた別の研究では、昆虫が減少した原因として「自然の生息地の破壊」、「殺虫剤」、「気候変動」、「光害」の4つを挙げています。

研究者は、昆虫は全ての作物の4分の3に受粉していると指摘し、昆虫の広範囲にわたる減少は、“自然生態系の壊滅的な崩壊”を引き起こすきっかけになるかもしれないと警告しました。

 

昆虫の減少は水温の上昇によっても引き起こされています。

Ecology and Evolutionに掲載された研究は、1969年から2010年までのドイツの自然保護区内の河川のデータを分析した結果、期間中に水温が1.88度上昇し、昆虫の個体数が81.6%減少したと報告しています。

研究者は、「気候変動は保護されている地域にさえ影響を及ぼしており、すでに野生生物のコミュニティを変化させている」と結論づけています。

 

昆虫の数に関する長期的および広範囲の調査はまれであり、その大部分はこれまで北米かヨーロッパでしか行われてきませんでした。

研究者の間では、他の地域でも調査をすべきであるという意見があるものの、具体的な動きに発展するのかは不透明なままです。

ケント・ワイルド・トラストは現在、昆虫の衝突データを簡単に提供できるスマートフォンアプリの開発に取り組んでいます。

 


 

 

せつな
せつな

昔は車で遠出をすると、びっしりついた虫の死骸を掃除するのが大変だったとか……

しぐれ
しぐれ

昆虫がぶつかって死なないのはいいことだけど、数が減少しているのは生態系にとって深刻な問題だね

 

 

 

References: The Guardian