国際的な科学者チームは地中海の海底から、これまで記録されたことのない大量のマイクロプラスチックを検出したと報告しています。
イタリア近くの地中海で採取された海底の堆積物は、研究室に持ち帰られた後、顕微鏡などを使って詳しい成分の分析が行われました。
その結果、1平方メートルあたりの土壌に、最大で190万個のマイクロプラスチックが含まれていることがわかりました。
マイクロプラスチックは、科学者によって定義が異なるものの、一般的には大きさが1ミリ未満のプラスチックの破片を指します。
海に流されるプラスチックの量は膨大で、ある試算では毎年400~1,200万トンが、主に川を通じて海に入っていきます。
現在科学者は、海に存在するプラスチックとそれが生態系に及ぼす影響について理解しようとしていますが、そのほとんどが人間の目の届かない場所にあるため、全容を把握するのは困難な状況です。
海流によって堆積した大量のマイクロプラスチック
英国マンチェスター大学が中心となって行った研究は、地中海の海底に想像以上のマイクロプラスチックが堆積していることを明らかにしています。
1平方メートルあたり190万個のマイクロプラスチックは、これまでに記録されたなかで最大レベルの量です。
マイクロプラスチックは、海流が合流する特定の場所で積み重なったと考えられています。
Scienceに掲載された研究の著者の一人で、国際的なチームを率いたマンチェスター大学のイアン・ケイン(Ian Kane)博士は、「これらは水中にできた砂丘のようなものだ」と述べ、その長さは、数十キロメートル、高さは数百メートルにもなると説明しました。
海底で見つかったマイクロプラスチック (Credit: University of Manchester)
海底のマイクロプラスチックの問題は、そこに住む生物が体内に取り入れることで、汚染が各地に広がっていくことにあります。
堆積物の多い海底は生物多様性のホットスポットであり、食物連鎖の上位にいる生き物の餌場としても機能しています。
小さな生き物が摂取したマイクロプラスチックはより大きな生き物へと移動し、最終的には人間が口にする魚にまで到達します。
ケイン博士は、プラスチックの本当の問題は、汚染物質や毒素がその環境に蓄積していくことにあると指摘しています。
発見されたマイクロプラスチックのほとんどが衣料品から出たもの
分析では、検出されたマイクロプラスチックの大半が、衣類や合成繊維からのものであることがわかりました。
これはマイクロプラスチックが、プラスチック材料の大きな断片からきているとする従来の考え方を覆すものです。
ケイン博士は、「使用期間の短いファストファッションや、プラスチック製のパッケージの利用を避けることで、全てを変えられる」と述べる一方で、マイクロプラスチックの海への到達を防ぐには、別方面からの圧力も欠かせないと指摘します。
マイクロプラスチックを海に流出させない方法としては、マンチェスター大学やフィンランドが開発したナノレベルの除去フィルターがあります。
しかし廃棄物処理場や水処理場の全てでフィルターを装着するのは簡単なことではありません。
ケイン博士は、こうした除去フィルターは実用的だが、実装には政策レベルでの強力な介入が必要になるだろうと話しています。
国際的な非営利海洋保全組織である「Oceana」のジャクリーン・サビッツ(Jacqueline Savitz)氏は、「この研究は、海面で観察されたものだけに焦点を合わせたプラスチック汚染の評価が、いかに間違っているかを示している」と述べ、「マイクロプラスチックと生物多様性のホットスポットとの関係性は、プラスチック製造をやめるよう強いるものだ」と付け加えました。
またプラスチック削減に関しては、「現状行われているクリーンアップでは不十分であり、リサイクルでさえも問題解決にほとんど役立っていない」と指摘し、海洋へのプラスチック流入の阻止は、政策立案者の行動にかかっていると強調しています。
海のプラスチックのほとんどは水中にあるとされている……
プラスチックを海に流さない方法を考え出さなくちゃね
References: The Guardian,BBC