乾燥し始めている世界の泥炭地、貯蔵されてきた二酸化炭素が大気に放出される危険性も

自然
Photo by Sean Paul Kinnear on Unsplash

過去数百万年にわたる植物が折り重なった地形である「泥炭地」は、地球の地表面積の3%しか占めていないのにもかかわらず、世界の二酸化炭素の約20%を貯蔵しています。

気候変動が進む現在、二酸化炭素をいかにして排出せず、また減らしていくのかは世界的な課題です。

泥炭地の二酸化炭素貯蔵システムは、長い間、地球の温度を一定に保つのに大きな役割を果たしてきました。

しかし科学者による研究は、世界の泥炭地が以前と比べ乾燥し始めてきていることを明らかにしています。

泥炭地の乾燥は、閉じ込められていた二酸化炭素の放出につながります。

これまで自然の二酸化炭素貯蔵庫であった泥炭地は、近い将来、逆に巨大な二酸化炭素排出源になる可能性があります。

 

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世界のほとんどの泥炭地が乾燥し始めている

 

photo by Tero Laakso/Flickr

 

科学誌Nature Geoscienceに掲載された研究は、ヨーロッパの泥炭地のほとんどが、ここ200年ほどの間に乾燥し始めてきていることを明らかにしています。

研究はイングランド、アイルランド、スカンジナビア、そしてヨーロッパ大陸にある31の泥炭地を調べ、過去2,000年間の炭素貯蔵率の変化を評価しています。

結果は、泥炭地のうちの40%が1,000年前よりも乾燥しており、24%が2,000年前よりも乾燥していることを示しました。

全体のうちの60%は、1800年から2000年の200年の間に乾燥し始めていて、それは過去600年のなかで最も乾いた状態でした。

 

研究著者の一人である、北アイルランドのクイーンズ大学ベルファスト校のマーティン・ブラウ博士は、泥炭地の持つ能力について次のように述べます。

 

泥炭地は私たちの惑星の大きな助けとなっています。大気から炭素を吸い取り貯蔵することができます。これは気候変動の緩和に役立ちます。

 

ブラウ博士は、今回の調査結果は沼地の持つ炭素吸収能力が変化したことを表すものであり、将来泥炭地は、炭素を吸収するのではなく炭素排出源へと変わってしまうかもしれないと警告しました。

調査を主導した、英国リーズ大学のグレイム・スウィンドルス博士は、気候変動と人間の影響による複合的な圧力が、泥炭地を炭素貯蔵庫から炭素排出源に推し進めてしまう可能性があると述べています。

そして、泥炭地を効果的な管理方法と積極的な修復により保護することがこれまで以上に重要になると指摘しました。

 

泥炭地は過去の死んだ植物が長い間分解されずに堆積した層で、世界の他の植生タイプ(植物が自生する環境)全てを合わせたよりも多くの二酸化炭素を吸収することができます。

泥炭地は土壌の表層の下に常に水分を蓄えており通常は湿った状態ですが、乾燥が進むと、これまで閉じ込めてきた二酸化炭素を大気に放出してしまいます。

IUCNー国連自然保護連合は、現在世界の泥炭地の約15%(世界の地表の約0.4%)が、温室効果ガスを大気に放出していると報告しています。

なぜ泥炭地が乾燥しているのかについては決定的な答えを出すことは難しいものの、専門家は、気候変動や泥炭の採取、排水、燃焼、農地への転換などが打撃になっていると指摘しています。

 


 

泥炭地の状態の変化は、ここ最近の人間の活動だけが原因ではない可能性もあります。

一方で世界の熱帯地域では泥炭地が農地に転用され、その結果、二酸化炭素の排出量が増加しているという報告もあります。

1,000年2,000年単位で進行している乾燥を止める術を見つけるのは簡単なことではありません。

しかし気候変動が地球の温度を上昇させているのは事実であり、各国は温室効果ガスの排出量を抑え、温度上昇を産業革命以前のレベルにすることを求められています。

泥炭地を保護し適切に管理していくことは、地球温暖化のスピードを遅らせるための効果的な手段の一つです。

泥炭地が無視された場合、人類は、「長い期間にわたって閉じ込められた炭素」というパンドラの箱に触れることになるでしょう。

 


 

 

かなで
かなで

どろどろの沼地が地球の役にたってるなんてなかなか気づかないよねー

しぐれ
しぐれ

泥炭地が人類の敵にならないようにみんなで守っていかなきゃいけないね

 

 

 

References: BBC