環境問題を語る上で最も注目されているものの一つが「マイクロプラスチック」です。
マイクロプラスチックは環境中に存在する微小なプラスチック片のことで、私たちが日常消費しているプラスチックが発生源になっています。
特に海洋環境での被害は深刻で、生物が摂取することで生態系に大きな影響を与えています。
プラスチックの排出に関しては国際的な取り組みが行われつつありますが、規制による効果よりも被害の拡散のほうが速いのが現実です。
一刻も速いマイクロプラスチック対策が求められる中、新たに行われた予備的研究は科学者をさらに悩ませる結果を示しています。
マイクロプラスチックはピレネー山脈の人里離れた地域でも検出される
イギリスのストラスクライド大学のSteve Allen氏を中心としたチームは、マイクロプラスチックの地上での汚染を調べるためにいくつかの場所で調査を行っています。
マイクロプラスチックの影響については主に海洋での調査が進んでいますが、内陸においての調査研究はほとんどないのが現状です。
チームはサンプルを収集するために特殊な集塵機を複数の場所に設置し5か月間にわたりその推移を記録していきました。
都市部においてマイクロプラスチックが検出されることは想定していましたが、彼らを驚かせたのは、周囲に人が住んでいない大自然の中でもマイクロプラスチックが検出されたことです。
チームは、フランスのピレネー山脈の手つかずの山岳地帯に設置した集塵機から毎日平均365個ものマイクロプラスチックが検出されたと報告しています。
この場所から一番近い集落は60マイル(約96km)先でした。
海洋では河川から流れ込んだプラスチックが海に広がり、潮の流れや太陽の熱で粉砕されそれがマイクロプラスチックになります。
しかしどうして人里離れた山奥でもマイクロプラスチックが発見されたのでしょうか。
山奥にマイクロプラスチックを運んだものの正体は“風”
Allen氏はこれらのマイクロプラスチックが“風”によって運ばれたのだと推定しています。
研究チームは大気シミュレーションを使った実験で、マイクロプラスチックがおよそ100km先まで風によって飛ばされる可能性があることを見出しました。
チームの一人は、マイクロプラスチックが街の中で見つかることは予想していたがこんなところでこれほど多くのものを発見するとは思わなかった、と述べています。
これまでマイクロプラスチックが風に乗って拡散していくという研究はほとんど知られていません。
今回の研究は小規模なものでしたが、チームはこの結果を、マイクロプラスチックが大気輸送を通じて遠隔地に運ばれそこに影響を及ぼす可能性を示唆したものだ、と結論づけています。
マイクロプラスチックの大きさの定義は海洋学者の間で割れていますが、確実なのは、私たちの目に見えないくらいの大きさのものがそこに含まれているということです。
既にマイクロプラスチックは空中を舞っている可能性があります。(そしてそれを吸い込んでいる可能性も)
海だけの話ならば直接実害がないと考える人もいるかもしれませんが、陸上のこととなればその害についてより緊急性を感じることができます。
公害は国境や場所を限定しません。
何かと便利なプラスチックですが一度その使用について考え直す必要があるのかもしれません。
References:ScienceAlert