観測衛星「CALIPSO」が明らかにする海洋生物の垂直移動と炭素循環

自然
Credits: NASA

NASAが大気中のエアロゾルや雲を調査するために利用している観測衛星「CALIPSO(カリプソ)」は、レーザー照射によって海中20メートル地点までの生物の分布も調べることができます。

海は生物の宝庫ですが、そこに住むものたちが一日の間にどの程度高低差のある移動をしているのかはよくわかっていません。

海面付近に生息するプランクトンなどの生物は、日中に光合成をすることで大気中の二酸化炭素を吸収しています。

またプランクトンを食べる魚は海底で排泄をすることで、二酸化炭素を海に閉じ込めておく役割をもっています。

こうした海の生物が行う炭素循環は、地球の温度を一定に保つのに貢献しています。

海洋生物の垂直移動に関するデータは、地球温暖化に悩む私たちにとって重要なものです。

 

スポンサーリンク

 

「CALIPSO」のレーザーは海洋生物の垂直移動を明らかにする

 

CALIPSO(Cloud-Aerosol Lidar and Infrared Pathfinder Satellite Observations)」と呼ばれる衛星は、NASAとフランスの宇宙機関「フランス国立宇宙研究センター 」の共同開発によって作られ、2006年に打ち上げられました。

CALIPSOの目的は雲の状態や大気中の物質を観測することにありますが、搭載されたレーザーは設計者が意図しなかった恩恵を科学者にもたらしました。

CALIPSOのレーザーは、本来の対象である大気を通り抜け、海中20メートルまで到達することができ、水中の生物やその行動についてたくさんのデータを得ることができます。

研究者の一人でNASAのラングレー研究所の科学者であるクリス・ホステトラー氏は、「今回の研究結果は、CALIPSOが海洋を測定できる感度をもっていることを実証したものだ」と述べています。

 

水中にまで届くCALIPSOのレーザー Credits: NASA/Timothy Marvel

 

Nature誌に掲載された研究は、「DVM(Diel Vertical Migration-日周垂直移動)」と呼ばれる、海洋生物の垂直方向の動きについて新しい事実を明らかにしています。

海の中の生物はいつも同じ場所にいるわけではなく、時間と共に上昇や下降を繰り返しています。

プランクトンなどを食べる小さな魚は、夜になると海の深い場所から上昇し食事をした後、日の出ともに再び深海へと戻っていきます。

これは、より大きな捕食者から身を守るため(視界から隠れるため)の行動だと考えられています。

しかしこの行動は魚が身を守るだけでなく、地球に住む全ての生き物にとって重要な行動でもあります。

 

海面のプランクトンとそれを食べる魚たちが行う垂直移動は、二酸化炭素を循環させ海に留めておくことで温暖化の影響を防いでいます。

海洋生物の垂直移動を理解することは、地球温暖化を解決に導く可能性につながります。

 

海洋生物の垂直移動は地球温暖化とも深い関係がある

 

CALIPSOが10年間にわたって取得してきた海洋データは、DVMに関する2つの事実を明らかにしました。

 

1つ目は、低栄養で澄んだ水域ではDVMがあまり見られなかったことです。

これは海面付近のプランクトンが少ないこともありますが、水が澄んでいることで魚たちが捕食者に見つかりやすくなることが大きく関係しています。

魚たちは水が澄んだ視界が良い場所には顔を出さず、夜になっても海面に向けて移動しない傾向がありました。

2つ目は、栄養が豊富で透明度が低い地域ではDVMが頻繁に見られたことです。

これは1つ目のものと逆のパターンで、海面付近のプランクトンと濁った水のおかげで、魚たちが深海から海面に向けて上昇することが多い傾向にあることを示しています。

これらの地域では昼夜を問わず、ほとんどの魚やプランクトンが海面付近に留まっていました。

 

また研究者はCALIPSOのデータから、気候変動が世界の海洋生物の分布にどう影響を与えているのかも観測しています。

それによると、観測期間中(2008年から2017年)に北太平洋と南太平洋、そして北大西洋および南インド洋の亜熱帯地域ではDVMを行う海洋生物の増加が認められました。

一方、熱帯地域と北大西洋(亜熱帯ではない地域)では海洋生物の数が減少していました。

これらは植物プランクトンの数と相関関係があり、熱帯地域で生息数が減ったのは、海水温度の上昇によってプランクトンが減少したことが原因だと考えられます。

 

海の生物を介した二酸化炭素の移動は、地球の炭素循環の重要なメカニズムとして認識され始めています。

この研究のリーダーである、オレゴン州立大学のマイク・バーレンフェルト教授は「CALIPSOの新しいデータは、海の動物の移動が地球の炭素循環に与える影響を定量化する」と語っています。

またDVMのデータは漁業関係者にとって貴重なものとなる可能性があります。

DVMの信号の大きさはそのエリアの海洋生物の層の大きさを表すため、漁業者は近い将来、魚を探す際に海洋生物の垂直移動を重視するようになるかもしれません。

 


 

海の生き物たちが地球環境に知らず知らずのうちに影響を及ぼしていることは、CALIPSOのような観測データがなければなかなか理解されないものです。

10年間の観測で、海洋の一部では既に温暖化が進行していることが示されました。

地球の環境を維持し守っていくためには、日常的にできる対策だけでなく、二酸化炭素がどういう経路を辿って循環しているのかを知ることも必要です。

CALIPSOが明らかにした海洋生物の垂直移動と炭素循環は、気候変動や温暖化の課題を解決するための一つの糸口となるでしょう。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

CALIPSOは元々海洋生物のデータを取ることを想定していなかったらしいよ

ふうか
ふうか

宇宙からじゃないとわからないこともあるから、想定外とはいえ幸運だったと言えるかもしれないな

 

References:NASA

コメント