現代の洗濯機は様々なモードを持ち、頑固な汚れを落とすための機能や衣類を傷つけないようゆっくりじっくりと洗う機能など、きれい好きな人たちの生活にとって欠かせない生活必需品となっています。
しかし最近行われた実験は、洗濯機が多量のマイクロプラスチックを放出する身近な道具であることを明らかにしました。
洗濯機は衣服の汚れを落とすだけでなく、マイクロプラスチックを川や海へと流す供給源でもあります。
多量の水は衣服から大量のマイクロプラスチックを引き剥がす
イギリスのニューカッスル大学の研究者たちは、洗濯機の機能の一つである「入念モード(念入りモード)」が、標準的な洗濯モードに比べより多くのマイクロプラスチックを環境に放出することを発見しました。
入念モードは標準の最大2倍の水を使って衣服の汚れを落とし、また傷がつかないように丁寧に洗うことのできる洗濯モードです。
これまでこのような繊細な洗濯方法は、衣服の原料であるポリエステルの成分からなるプラスチック繊維をそれほど放出しないものと考えられていました。
しかし研究結果は正反対で、入念モードは標準の洗濯モードよりも平均で800,000個以上のマイクロプラスチックを放出することがわかりました。
研究を主導した海洋微生物学者のグラント・バージェス教授はこの結果に大変驚いたと語ります。
通常衣服を保護するための繊細な洗浄方法は、放出されるマイクロファイバーの量が少ないと期待しますが、入念な研究結果はそれが実際には逆であったことを示しました。
教授は、繊細なモードで衣服を洗うとより多くのマイクロプラスチックが放出され、それらは生分解性ではないため私たちの環境に蓄積する可能性がある、と警告しています。
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なぜ入念に衣服を洗うとマイクロプラスチックを多く放出するのでしょうか。
研究結果はそれが“使う水の量”にあると特定しています。
入念な洗濯モードは時間をかけて衣服を洗うため、通常の場合と比べ多くの水が使われます。
バージェス教授は洗剤の成分や素早い回転による衣服の傷つきなどではなく、どれだけの量の水が衣服を通り抜けるのかが、マイクロプラスチックの排出量に関わる重要な要素だと指摘します。
洗濯の水の量が多い場合は少ないときと比べ衣服に水が通る割合がより高くなります。水は衣服を通り抜けるときに布地からポリエステルの繊維を引き剥がします。
衣料産業は毎年4,200万トン以上の合成繊維を生産していて、それらの約80%がポリエステルを含んでいます。
過去の研究では合成繊維でできた衣服を洗濯すると、1回につき平均で50万~600万個ものマイクロプラスチックを放出することがわかっています。
ほとんどの洗濯機には廃水からマイクロプラスチックを除去するフィルターがついていないため、繊維は水処理プラントを経て最終的には海に流れ出します。
現在、陸はもちろんのこと、海の至るところで(最も深い海溝の底でさえ)マイクロプラスチックが確認されていて、それらを摂取した動植物は巡り巡って私たちの口に運ばれることになります。
洗濯モードの違いの研究は、海に充満しているマイクロプラスチックがどのような経路でやってきたのかを特定するために役立つ可能性があります。
今回の研究には参加していなかったエクセター大学の生態毒性学者タマラ・ギャロウェイ教授は、この研究が海洋環境と食物連鎖を保護するための重要なものだと語ります。
亀、アザラシ、イルカなどほとんどの海洋動物でマイクロプラスチックが発見されています。衣類から放出されるマイクロプラスチックを摂取することがどう健康に影響を及ぼすのかは確かではありませんが、海洋環境と食物連鎖を保護するためには、曝露を最小限に抑えることが最優先事項です。
マイクロプラスチックはとても小さいため、洗濯機の糸くずフィルターなどでは捉えきることができません。
また現在販売されている洗濯機に微小なプラスチック片を取り除く機能もありません。
現時点で私たちにできる最善の環境保護――それは少ない水で洗濯することです。
References:The Guardian