脳の潜在能力を引き出す方法に「ブレインハック」とよばれるものがあります。
人間は日常生活において脳のごくわずかな部分しか使用していません。
もしいくらかでもその割合を増やすことができれば、もっと創造的になれるはず、というのがブレインハックの主な考え方です。
とはいえ、なにやら難しそうなイメージもあり、また科学的な根拠についても様々な意見があるのが現状です。
ブレインハックが人間の潜在能力を引き出すうえで本当に役立つものであるかは、今後の研究を待つべきです。
しかし、生活のなかに取り入れるだけで、確実にリラックス効果や生産性の向上につながる方法があるのも事実です。
ここではブレインハックのなかから、すぐに使えそうなもの4つを紹介します。
クラシック音楽を聴く
クラシック音楽がリラックス効果を生むことは広く知られています。
これは休んでいるときだけでなく、勉強中や仕事中でも一定の効果があります。
科学誌Learning and Individual Differencesに掲載された論文は、学生を対象にクラシック音楽のリラックス効果について検証しています。
ここでは、1時間の講義中に、クラシック音楽を流したグループとそうでないグループとにわけ、その後の選択式問題の正解率について調査をしました。
その結果、講義中にクラシック音楽が流れていたグループの正解率は、もう一方のグループと比べ、有意に高くなることが示されました。
なぜこうしたことが起きたのかははっきりとしていませんが、研究者は、クラシック音楽が学生の情緒を開放的にし、それにより情報への受容性が高まった結果だとしています。
またクラシック音楽がリラックス効果を生み、頭の柔軟性につながったとも指摘しています。
クラシック音楽によるリラックス効果は、緊張をほぐし、体験への扉を開きます。
勉強や仕事の効率性が鈍ってきたと感じたら、クラシック音楽をかけるのも一つの方法です。
ワークスペースに個人的なアイテムを持ち込む
仕事において集中を維持することは生産性にとって重要です。
周囲に誰もいず、音も聞こえない環境で仕事をしている人はそれほど多くはありません。
そのため、いかに現状を変えず仕事に集中できる環境をつくるのかが求められています。
アメリカの科学的心理学会は、仕事の効率とプライバシーとの関係について調査を行い、プライバシーの低い環境で仕事をするとストレスレベルが高くなることを発見しています。
仕事中は、同僚を含め、他人との接触をしないわけにはいきません。
また周囲の騒音はいらいらを募らせる原因にもなります。
科学的心理学会は、こうした状況であっても一定のプライバシーを保つことが重要であると指摘し、身の回りに個人的なアイテムを持ち込む方法を提案しています。
邪魔にならない程度のお気に入りのアイテムをデスクに置く、あるいは身に着けてすぐに取り出せるようにしておく、などの方法は、仕事の合間であっても自分らしさを取り戻すための良い方法になります。
オメガ3脂肪酸を含む食品を食べる
オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸の一つで、主に魚類、大豆やゴマ、クルミなどに多く含まれています。
ハーバードメディカルスクールの神経科助教授であるスコット・マクギニス氏は、オメガ3脂肪酸が細胞膜の構築に貢献し、抗炎症作用や抗酸化作用を生み出すと指摘しています。
オメガ3脂肪酸は、健康な体をつくり、脳の活性化に寄与します。
オメガ3脂肪酸は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対して効果があることも知られています。
毎日の食事にオメガ3脂肪酸を含むものを取り入れれば、脳を明晰に保ち、心を落ち着かせるのに役立ちます。
記憶の宮殿をつくる
「記憶の宮殿」は、場所法とも呼ばれる一種の記憶術で、頭の中に自分がイメージしやすい家を作り、そこに覚えておきたい事柄をリンクさせるというものです。
記憶の宮殿は古代ギリシャ時代から使われてきた記憶術で、パソコンがメモリにアクセスするかのように、瞬時に情報を呼び出すことができます。
記憶の宮殿を作るには、まず自分がイメージしやすい場所――家や部屋など――を思い浮かべます。
そしてその中にあるオブジェクト、すなわち机やベッドや小物などに、覚えておきたい情報を一つずつリンクさせていきます。
自分が心地よいと感じる情報や、どうしても忘れるわけにはいかない情報などを、普段から接しているなじみ深いものとリンクさせれば、必要なときにそれを呼び出して状況に対処することができます。
記憶の宮殿は一日で作られるものではないため、日々情報をリンクさせ、イメージの中の空間を実際に歩いてみる必要があります。
自分が作り上げた宮殿にいつでもアクセスできるようになれば、日々の生活や仕事に、よりリラックスした状態で臨むことができます。
リラックスできる環境をつくるのが大事だね
とりあえず魚や大豆を食べることから始めてみよう……