祝火星着陸7周年!探査車キュリオシティが明らかにする火星の水の歴史

宇宙
Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

2019年8月6日は、火星探査車キュリオシティが火星にあるクレーターに着陸してから7周年の記念日にあたります。

NASAが2011年11月26日に火星へ向けて打ち上げた「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」は、翌年2012年の8月6日に、火星のエリシウム平原にある「ゲイルクレーター」に着陸しました。

MSLは公募で決まった愛称「キュリオシティ」の名前で親しまれ、着陸以降火星の大地を調べそこにかつて生命が住んでいた痕跡をいくつも発見してきました。

NASAがキュリオシティを火星に送り込んだ理由の一つが、過去と未来における火星での生命の可能性を探るというものでした。

 

キュリオシティは当初約2年ほどの運用を計画していましたが、その後2012年の12月にミッション期間が無期限に延長されることになります。

キュリオシティは7年間で21kmを移動し、着陸した場所から現在の場所まで368mの高さを登ってきました。

そして2013年の2月8日に最初の掘削を行ってから現在に至るまで火星の地表から多くの試料を採取してきました。

NASAはキュリオシティが現在22回目のサンプル採取をしており、それはまだ完成しておらず今後も続けられる見通しであることを発表しています。

 

キュリオシティに積まれた原子力電池はまだ数年稼働できる見込みで、NASAは慎重にパワーを制御し予算を編成することでできるだけ長く運用したいと考えています。

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キュリオシティが明らかにする火星の複雑な水の歴史

 

キュリオシティが2019年6月18日に撮影した「ティールリッジ」と呼ばれる場所 Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS 

 

キュリオシティは現在ゲイルクレーターの内側に位置する通称「シャープ山」の側面にある「粘土含有ユニット」と呼ばれる地域にいます。

ここには数十億年前、小川や湖が存在していました。

キュリオシティは地中の堆積物から粘土質の鉱物を採取しその成分を調べることで、火星がなぜ水のある環境から乾燥した不毛の土地へと変化したのかを探ろうとしています。

 

キュリオシティがこの粘土質の地域にやってきたのは、火星の上空で同じように探査を続けているMRO――マーズ・リコネッサンス・オービターの情報がきっかけでした。

MROの上空からの地表データは、ゲイルクレーターのこの地域に粘土質の層があることを示していました。

粘土層はかつてこの場所に水があったことを証明する有力な証拠です。

キュリオシティの粘土ユニットキャンペーンの共同リーダーの一人であるクリステン・ベネット氏は、MROのデータがきっかけでこの場所を調査することになったと述べています。

 

私たちはオービターの画像を10年間研究してきましたが、ついにこの場所を間近で調べることができるようになりました。

 

キュリオシティが粘土含有ユニットで採取した岩石サンプルには多くの粘土鉱物が含まれていました。

そしてさらに科学者たちを驚かせたのは、MROが粘土層を検知できなかった場所でも粘土鉱物が発見されたことです。

これはMROが火星軌道という上空からでしか地表を調査できないのに対し、キュリオシティは地面を詳細に調べることができたからだと考えられます。

粘土層が当初の想定よりも広範囲にわたり存在していると判明したことは、科学者たちの好奇心(英語で“キュリオシティ”)を刺激しました。

 

キュリオシティは別の場所に移動しさらに複雑な地形を調べることにしました。

 


 

キュリオシティは「ストラスドン(Strathdon)」と呼ばれる場所で詳細な画像を撮影しています。

 

キュリオシティが撮影したストラスドンの地形 Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

 

この場所は、硬い波状の堆積物が重なり合ってできた岩で形成されており、かつての火星に動的な環境――風と流れる水、もしくはその両方――があったことを示唆しています。

共同リーダーの1人であるヴァレリー・フォックス氏は、これらの岩には古代の湖の環境変化が見られると語ります。

 

ここはただの静止した湖ではありませんでした。これは、火星が水のある状態から乾燥した状態に移行したという単純な見方を変えるのに役立ちます。火星の水の歴史はもっと複雑なものでした。

 

キュリオシティは今後も火星の地表を調べることで、水であふれ生命に満ちていたかつての火星の姿の解明に取り組んでいく予定です。

 


 

現在火星の地表で活動しているのは、キュリオシティと、昨年着陸に成功した探査機「インサイト」の2機のみです。

インサイトは“ランダー”に属しており、地表を動き周らず固定の場所で主に地中の調査に励んでいます。

 

 

一方“ローバー”であるキュリオシティは今後も原子力電池が切れるまでの間、さらに火星の地表を駆け巡り地球に貴重なデータを送ってくれるはずです。

 

NASAは近い将来、月を中継地点とした火星への有人飛行を計画しています。

キュリオシティの収集したデータが未知の領域に挑む人類にとって有益な道しるべになることは間違いありません。

 

7年の間孤独に任務を遂行してきたキュリオシティ……その働きに感謝しつつ、これからもできるだけ長く活動し、私たちに火星の秘密を届けてくれることに期待しましょう。

Congratulations!Curiosity!

 

 

 

 

References:NASA