NASAは地球に衝突する可能性のある小惑星アポフィスを改めて分析した結果、今後少なくとも100年間は安全であることが確認されたと発表しました。
アポフィス(99942 Apophis)は2004年に発見された地球近傍天体の一つで、地球に近い軌道をもつことから、潜在的に危険がある星として監視リストに入っていました。
直径約340メートルのアポフィスは過去の分析で、2029年と2036年、そして2068年の接近時に地球に衝突する可能性が指摘されていましたが、その後リスクが再評価され、前二者については問題が起きないことがわかっています。
今回の分析結果は、2068年の衝突の可能性も、完全にゼロになったことを意味しています。
太陽を約323日で一周しているアポフィスは2021年の3月5日、地球から約1700万キロメートル離れた地点を通過しました。
この時の動きを、カリフォルニアにあるゴールドストーン深宇宙通信施設と、ウェストバージニアにあるグリーンバンク天文台の望遠鏡が追跡し、改めて分析が行われました。
アポフィスの2029年の軌道。中央が地球 (ESA/NEO Coordination Centre)
分析では、地球に接近した際の今後の軌道の変化に焦点があてられました。
次回アポフィスが最も接近するのは2029年で、地球から32,000キロメートル未満の地点を通過します。
この距離は地球の重力によって軌道が変化するのに十分ですが、従来の分析では、それがどの程度の範囲に収まるのかが予測できませんでした。
今回の二つの望遠鏡による観測は、アポフィスの軌道のブレをより詳細に理解するのに役立ちました。
分析に関わったNASAの地球近傍天体研究センターのダビデ・ファルノッキア氏は、「アポフィスの2068年の影響は、もはや可能性の領域ではなくなりました。私たちの計算では、少なくとも次の100年で衝突のリスクはありません」と述べています。
アポフィスは2029年の4月13日に、月よりも10倍以上近い地点を通過します。
これは科学者にとって、天体の状態や構造を学ぶ絶好の機会です。
アポフィスは、二つの球が重なったピーナッツのような形状であると推測されており、詳細な観察ができれば、以降の軌道に関する重要なデータを得られる可能性があります。
ファルノッキア氏は、「危険な星の代表であったアポフィスが、リスクのリストから除外されるのは一定の満足感があります。2029年の接近時に明らかになるかもしれない科学を楽しみにしています」と述べています。
2029年の接近時には、肉眼でもアポフィスを見れるそうだぞ
32,000キロって随分近いけど大丈夫なのかな……