ESAとNASAが運用している太陽観測機「ソーラー・オービター」は、6月15日、これまでで最も近い距離となる7,700万キロの地点から太陽を撮影しました。
2020年2月9日に地球を飛び立ったソーラー・オービターは極の観測を目的としており、現在、地球や金星をスイングバイしながら徐々に太陽に接近しています。
今回の撮影は搭載された機器のチェックのために行われたものですが、地球に届いた画像は想像以上の驚きを科学者にもたらしました。
太陽表面の小さな爆発「キャンプファイヤー」
NASAのミッション科学者であるホリー・ギルバート氏は画像について、「私たちが見ることのできる最も近い太陽の写真であり、前例のないものだ」と説明し、「太陽の大気層や、太陽系全体の宇宙天気の理解に役立つ」と述べています。
またESAのソーラー・オービターの科学者であるダニエル・ミュラー氏は、「思ってもみなかった素晴らしい結果であり、観測機が目的に向かってよいスタートを切っていることの証拠だ」と話しています。
(Credit: Solar Orbiter/EUI Team/ESA&NASA; CSL,IAS,MPS,PMOD/WRC,ROB,UCL/MSSL)
ソーラー・オービターが撮影した画像のなかで特に注目されたのは、太陽の表面で起きている「キャンプファイヤー」と名付けられた小さな爆発です。(上の画像の矢印の先がキャンプファイヤー)
太陽では絶え間なく爆発が起きており、その表面温度が約5,500度であることが知られています。
一方で、太陽の上層で形成されるコロナの温度は100万度にも達します。
科学者は、なぜ太陽の表面よりも上層部分のほうが高温なのかについて、未だ明確な答えを持ち合わせていません。
新しく確認されたキャンプファイヤーは、高温のコロナの謎を解くカギとなる可能性があります。
地球の大きさは左下の丸と同じ (Credit: Solar Orbiter/EUI Team/ESA&NASA; CSL,IAS,MPS,PMOD/WRC,ROB,UCL/MSSL)
ソーラー・オービターのイメージング機器「EUI (Extreme Ultraviolet Imager)」によって撮影されたキャンプファイヤーについて、ベルギー王立天文台のダヴィッド・ベルグマンス氏は、「これは太陽フレアの親戚であり、少なくともそれらの100万倍、おそらくは10億倍小さなものだ」と説明しています。
キャンプファイヤーは小さなものでもヨーロッパの面積と同じくらいの大きさがありますが、温度ははっきりしておらず、高温のコロナとの関連については今後の観測データを待つ必要があります。
ソーラー・オービターには、太陽表面の温度や、高温のコロナ環境を測定できる機器「SPICE (Spectral Imaging of the Coronal Environment)」が搭載されています。
SPICEの主任研究員であるフレデリック・オーシェール氏は、「キャンプファイヤー自体は重要ではないが、太陽コロナの加熱に寄与している可能性がある」と説明し、「今後新しく加わるデータを使ってキャンプファイヤーを確実に検出し、その役割を定量化したい」と話しています。

ソーラー・オービターの活躍で、太陽表面と上空の温度差の謎が解けるかもしれないな

太陽でキャンプファイヤー……字面だけで暑い……