NASAの木星探査機ジュノーからのデータは、従来の木星形成理論に新たな見方を付け加えています。
木星は、地球や金星、水星のような岩石惑星とは違い、気体で構成されたいわゆる“ガスジャイアント”として知られていますが、その中心核には岩石を主体とした成分が存在すると考えられています。
しかしジュノーの重力場に関する観測データは、木星のコア(核)が、当初考えられていたものよりも遥かに大きく、また密度が低い可能性があることを示しました。
Natureに掲載された研究によると、木星の中心部にあるコアは地球のような高密度の重金属ではなく、自身の半径ほどもある大きさの引き延ばされた「薄いコア」である可能性があります。
科学者たちは木星のコアが薄く引き伸ばされている原因を探るべく、コンピューターを使った惑星衝突シミュレーションを行っています。
シミュレーションは木星の薄いコアの形成に、巨大な惑星の衝突が必要であることを示しました。
木星の現在のコアは、地球の10倍サイズの惑星が衝突してできた
探査機ジュノーと木星 Credits:NASA/JPL-Caltech
ジュノーの木星の重力に関するデータを元に惑星衝突シミュレーションを行った結果、木星のコアが薄く引き伸ばされるためには、巨大な別の惑星が衝突する必要があることがわかりました。
木星の従来のコアを破壊するには、地球の10倍ほどの大きさの惑星が衝突する必要があります。
惑星の衝突によって破壊されたコアは木星の上層部へと拡散され、ヘリウムや水素と混ざり合います。
そうしてできたのが、木星の半径ほどもある巨大で薄いコアです。
研究著者でスイスのチューリッヒ大学の天体物理学教授であるラビット・ヘレド氏は、木星には元々小さなコアがあったが、それらは初期の惑星衝突によって破壊され“ファジー”なコアへと変化したと述べます。
これはコアがおそらく岩石と氷で作られているだけでなく、水素とヘリウムと混合されていることを意味しています。
木星はその巨大さから現在でも太陽系に紛れ込んだ彗星や小惑星を引き寄せていますが、太陽系が形成された当時の宇宙には今よりも多くの物体が飛びかっていました。
研究著者の一人で米国ライス大学の天文学者であるアンドレア・イセラ氏は、太陽系が若い混沌の時期に木星はより多くの物体を引き寄せていたと語り、現在の木星のコアがこの時期の惑星衝突によってできたものだとしています。
木星のコアは惑星形成についての理解を深める
木星の現在のコアが、惑星の衝突によってバラバラに破壊された初期のコアによって形成されたものであるという考え方には、異論を唱える科学者もいます。
ジュノーのミッションリーダーであるスコット・ボルトン氏は、惑星衝突以外のシナリオも検討する必要があると考えています。
ボルトン氏は、木星のファジーなコアの形成理由は、初期の木星が形成される際に重元素とガスとが混ざりあったことや、コアが形成される際の攪拌プロセスなどによっても説明できるとしています。
いずれにしても木星のコアに関する研究は進行中の作業です。
科学者たちは、木星のコアが太陽系誕生時から現在までの45億年間ずっとそのままだったのか、もしくは途中で別の進化を遂げたのか、さらなる調査をしたいと考えています。
また惑星衝突によってコアが別の形になったという事実は、他の惑星――例えば地球と月(地球に衝突した惑星が月になったといういわゆる“ジャイアントインパクト説”)、水星(太陽系の惑星の中で最も鉄の含有率が高い)、天王星(自転軸が98度傾いている)――がどのようにして作られたのかについての新しい考え方につながる可能性があります。
2016年に木星の軌道に入り観測を始めたジュノーは2021年まで活動し、今後も貴重な観測データを地球に届けます。

地球の10倍サイズの星がぶつかっても何ともないとは……木星おそるべし……

木星は今でもたくさんの彗星や小惑星を引き寄せているぞ。地球に隕石が衝突しないのも木星のおかげだな
References:ScienceNews,アストロバイオロジーセンター