土星の衛星タイタンは、これまで考えられていたよりも速く土星から遠ざかっている可能性があります。
月は地球と引っ張り合うことで生じる潮汐力により、毎年3.8cm遠ざかっています。
同じようにタイタンも、毎年0.1cmの割合で土星から離れているはずでした。
しかし新しい研究によるとそれは間違いであり、現在タイタンは1年間で11cmも土星から遠ざかっています。
これは従来の予想の100倍のペースに相当します。
タイタンは内側の衛星と同じスピードで遠ざかっている
Nature Astronomyに掲載された研究は、2017年に土星に突入しミッションを終えたカッシーニのデータと、宇宙物理学者のジム・フラー氏が発表したタイタンに関する論文とを重ね合わせた結果、タイタンの土星を遠ざかるスピードが従来の予想よりも速いこと発見しています。
地球と月をベースにした考え方では、二つの天体の距離が離れているほど潮汐力の影響は弱まります。
そのため土星から約120万km離れた地点を周回しているタイタンは、内側にある他の衛星よりも遠ざかるスピードが遅くなると考えられてきました。
しかしフラー氏は4年前に、タイタンに特定の潮汐作用が働けば、遠ざかるスピードは内側の衛星と同じになると指摘しました。
今回の研究結果はフラー氏の理論を裏付けるものであり、衛星の遠ざかる速度に関する過去50年の考え方を覆すものです。
研究では2006年から2016年までのカッシーニによるタイタンの位置データと、タイタンから受ける重力によって変化したカッシーニの速度のデータを使い、遠ざかるスピードを計算しました。
タイタンの位置データには、1886年にまでさかのぼる歴史的な観測結果も付け加えました。
その結果、タイタンの土星を離れるスピードが年間で11cmにも達していることがわかりました。
これは、タイタンや他の衛星が土星にかなり近い場所で形成された後、40億年以上をかけて今の位置に移動してきた可能性を示唆しています。
研究著者の一人でフランスPSL大学の天文学者であるヴァレリー・レイニー氏は、「この結果は、土星システムとその衛星がどのように形成されたのかについての新しいパズルのピースである」と述べています。
またフラー氏は今回の分析結果について、「新しい測定値は、惑星と衛星の相互作用についての従来の予想を変えるものであり、他の惑星系や太陽系外惑星さらには連星系など、多くのシステムに適用できる」と話しています。
0.1cmと11cmの違いでも数十億年単位ならものすごい差になるね
他の惑星の衛星についても考え方が変わる可能性があるな
References: NASA