頑丈すぎるスペースデブリ、ソビエトの金星探査機「コスモス482号」

宇宙
(Model of a Venera lander/Public Domain/Wikimedia Commons)

地球を周回する衛星をはじめとした人工物は、最終的に大気圏に突入して燃え尽きるか、あるいは太平洋の陸から最も遠い地点に落下させられて活動を終了します。

しかし一部のものは役目を終えた後も延々と地球を回り続けています。

これらスペースデブリとよばれる宇宙空間のガラクタのほとんどは、時間をかけて地球の重力に引き寄せられ、大気圏を通過する際に燃え尽きます。

 

通常、人工衛星などの運用終了時には、地上からの操作によって軌道が調整され事故が起きないように慎重に落下させられます。

しかし地球を周回している物体のなかには、既にアクセス手段がなく放置せざるを得ないものも存在します。

1972年にソビエトが打ち上げ、空中分解した金星探査機「コスモス482号 (Kosmos 482)」もそのうちの一つです。

コスモス482号は、金星という過酷な環境に合わせてとてつもなく頑丈に作られました。

この探査機の一部は今でも地球を周回しており、近い将来、燃え尽きることなく地上に落下する可能性があります。

 

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コスモス482号――ソビエトの金星探査計画「ベネラ」の機体の1つ

 

コスモス482号はソビエトが金星に送り込んだ数多くの機体のうちの一つで、ベネラ計画とよばれる一連の金星探査ミッションのために作られました。

金星の地表の温度は500度近い高温であり、うまく探査機を着陸させることができたとしても、どれだけの時間稼働できるかは未知数でした。

そのためベネラシリーズの機体の素材には、通常の探査機よりも頑丈なものが採用されました。

しかしこの頑丈さは、金星の灼熱地獄の探査には向いている一方で、万が一打ち上げに失敗した場合、大気圏の摩擦で機体が燃え尽きない可能性があることも意味しています。

 

コスモス482号の姉妹機「ベネラ8号」の切手 (Public Domain/Wikimedia Commons)

 

コスモス482号は1972年3月31日、4日前に打ち上げられた姉妹機「ベネラ8号」に続いて、バイコヌール宇宙基地を飛び立ちました。

無事金星の地表に到達し、破壊されるまでの間多くの貴重なデータを地球に送り届けたベネラ8号に対し、コスモス482号は不運にも、地球の周回軌道を離れることに失敗し、空中分解しました。

総重量1,180kgのうちの一部分は、その後の一カ月で地球に落下し回収されたものの、残り約495kgの部品はいまだ地球を周回しています。

問題は、このスペースデブリが固く頑丈であり、コントロールが効かないことにあります。

 

コスモス482号の残骸を長年観察している天文家、トーマス・ドーマン(Thomas Dorman)氏は、現在(2019年)の破片の平均高度が約1,309kmであり、この高さが年々低くなっていると警告します。

昨年の平均高度は約1,367kmでした。

観察では、コスモスの遠地点が2,735kmである一方、近地点は地球からわずか200kmほどしか離れていないことがわかっています。

平均高度の低下は、コスモスの残骸が、地球の重力に徐々に引き寄せられていることを示唆するものです。

ドーマン氏は、「破片は問題なく再突入することができる」と述べ、コスモスが燃え尽きずに地表に到達するのは十分にありうることだと強調しています。

 

コスモスが実際に地球に衝突する可能性はゼロではありません。

ドーマン氏は、衝突は2019年から2020年の間に起こりうると指摘していますが、その一方で、太陽活動がコスモスの軌道に影響を与える可能性があるため、予測は簡単ではないと付け加えています。

 

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これまでにスペースデブリの落下による死亡事故は起きていませんが、危険がなかったわけではありません。

1973年にアメリカが打ち上げた宇宙ステーション「スカイラブ」は、運用を終え大気圏に突入する時点になっても正確な落下場所を特定することができなかったため、その危険性が大きく取り上げられました。

(落下地点や時間を予測する賭けや、破片を見つけた人に賞金が出るなど、スカイラブの落下は世界的な注目を集めました)

 

コスモス482号は、スカイラブ同様落下地点を予測できないだけでなく、その頑丈さから、地上に衝突した場合大きな被害をもたらす可能性があります。

 

 

 


 

 

ふうか
ふうか

別の研究者はコスモスの落下を2023年から2025年頃と予測しているぞ

しぐれ
しぐれ

金星の環境に耐えられる物体がいつ落ちてくるかわからないなんて心配だね

 

References:ScienceAlert,Space.com

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