金星に向かった探査機の残骸が地球に落ちてくるかも――1972年のコスモス482号

地球の軌道上では様々な物体が飛び回っています。

稼働を終えた衛星を始めとしたスペースデブリとよばれる一連の”がらくた”のほとんどは、地球に落下しても大気圏との摩擦によって消滅してしまいます。

 

しかし過去には燃え尽きず破片が地上に衝突した例もあります。

最近の観測によると近い将来1つの大きな塊が燃え尽きることなく地上に落下するとみられています。

 

コスモス482号――ソビエトの金星探査計画ベネラの機体の1つ

 

Photo byVenera 1962 diagramm – Venera – Wikipedia

 

地球に落下すると考えられている物体は1972年にソビエトが打ち上げた金星探査機コスモス482号(Kosmos 482)です。

当時のソビエトは金星に向けて数多くの探査機を送り込んでいましたがコスモスもそのうちの1つでした。

 

ベネラ計画とよばれる金星探査ミッションはほとんどの場合探査機2機をペアとして短い間隔で打ち上げを行いました。

コスモスの4日前にはベネラ8号が打ち上げられ無事に金星に到着しましたが、コスモスは残念ながら失敗し上昇中に分解してしまいました。

その際には495kgの部品が地球に落下しましたが、それがコスモスの全てではありませんでした。

 

残ったコスモスの残骸は現在も50年近くにわたって地球軌道をぐるぐると回っています。

 


 

衛星観測者のThomas Dorman氏によると、現在コスモスの残骸は地上から平均1309kmの地点を楕円軌道で周回しています。

しかし去年の観測ではその距離は1367kmでした。

次第に高度を下げている理由はいうまでもなく地球の重力です。

 

スペースデブリの多くは次第に速度を失い最後には地球に引き寄せられ大気圏で燃え尽きるというのが一つのパターンです。

コスモスの残した残骸もこの方程式からは逃れられないのですが、ここで問題になっているのがその残骸のもつ強度です。

 


 

ベネラ計画で目指した金星の環境は恐ろしいまでに過酷です。

地表の温度は500度近くあり、分厚い二酸化炭素の大気がもたらす気圧は地球の90倍もあります。

人間はもちろん機械であっても並みの耐久力では地表に到達できないか、到達したとしてもすぐにぺしゃんこにつぶれてしまいます。

そのためソビエトの科学者たちはベネラ探査機シリーズを過酷な環境に耐えられるように設計しました。

コスモス482号も同じ設計なので、その強度はおそらく地球の大気圏の摩擦程度では破壊することができないと考えられるのです。

 

Dorman氏はコスモスの機体の40%から50%の部分がいまだ地球を周回していると考えています。

そしてその高度が年々低くなっていることから今年後半か来年には地球に落ちてくるだろうと予測しました。

 

地球に衝突し被害をもたらす現実的な可能性

 

 

コスモス482号の打ち上げ時の重量は1180kgです。

そして打ち上げの失敗により地球で回収された部品の総量が495kgでした。

小さな部品は大気圏で燃え尽きた可能性がありますが、単純な差し引きでは700kg近くの残骸が地球を周回していることになります。

そしてその金属の塊がとてつもない耐久力を持っているのですから危険性は計り知れません。

 

Dorman氏が述べたように近い将来の落下が迫っているならば身の安全のために行動する必要があります。

しかし過去の事例からみるとスペースデブリの被害というのはあまり多くはありません。

少なくともそれによって死者が発生したことはこれまで一度もありません。

 

そして――これは確率の話ですが――地球の7割が海であることも人類にとっては幸運なことです。

2018年4月2日に中国の軌道上実験モジュール天宮1号が役目を終えて大気圏に再突入しました。

ほとんどは摩擦により消滅しましたが燃え残った一部が地球に降ってきました。

しかしその残骸が到達したのは太平洋のど真ん中でした。

 

 

 


 

ほとんどの衛星は危険を最小にするために大気圏再突入時に燃え尽きるように設計されています。

しかしコスモス482号はそのミッションの特徴からおそらく摩擦に耐えきると考えられます。

そして50年近く前の機体であり、地球に帰還することを念頭に設計されていないためその落下が脅威になることは間違いありません。

 

幸い現在の観測技術は発達していて予測精度も高くなっています。

今後の状況次第ですが、外を出歩くときには少しだけ頭上に注意を向けてみてもいいかもしれません。

 

 

References:ScienceAlert

宇宙
スポンサーリンク
ふうかをフォローする
しぐれちゃんねる

コメント