NASAの成層圏赤外線天文台「SOFIA」が、月面の太陽のあたる地点から水の痕跡を発見しています。
月の水はこれまで、クレーターの影の部分や極地方などの太陽光が届かない場所でしか見つかっていません。
月には地球のような厚い大気がないため、水があったとしても太陽の熱により分解され宇宙空間に逃げていってしまいます。
太陽光にさらされる場所での水の発見は今回が初めてのことです。
太陽光のあたる場所に水が存在する理由は謎
水の分子が確認されたのは、南半球にある「クラビウスクレーター」で、その濃度は1立方メートルあたり100~412ppmでした。
この量は水に換算すると約340ミリリットル(12オンス)に相当しますが、飲料水や資源として利用できるかどうかは今後のさらなる調査が必要です。
地球上の乾いた場所としてはサハラ砂漠が挙げられます。
しかしこの暑い場所でさえ、クラビウスクレーターの100倍以上の水分が存在しています。
NASAの科学ミッション本部の天体物理学部門のディレクターであるポール・ハーツ氏は、太陽光を浴びる地域に存在する水の分子について、「月面の理解に挑戦するものだ」と述べています。
太陽の熱を受ける場所に水がある理由はよくわかっていません。
科学者は、「月面に降り注いでいる微小隕石に水が含まれており、それが月面に堆積した」、あるいは「太陽からの太陽風が月に水素を送り、それが土壌中の酸素を含む鉱物と化学反応した」などの仮説を立てています。
月の水は、ボーイング747-SPを改造した“空飛ぶ天文台”SOFIAによって発見されました。
SOFIAは、水蒸気がほとんど存在しない高度約13,700メートル(45,000フィート)の地点まで上昇し、宇宙を観測しています。
今回の発見は偶然によるものでした。
SOFIAのオペレーターは2018年8月、遠くの星を観測する際に前面に明るい月があるのを確認した後、月の水についての長年の疑問に答えるべく月面に望遠鏡を向けました。
SOFIAが月を観測するのは初めてで、この時点では誰一人、月面に水があるとは想像もしていませんでした。
エイムズ研究センターのSOFIAのプロジェクト科学者であるナシーム・ランワラ氏は、「この発見がテストからのものであるのは信じられないことだ」と述べています。
SOFIAは今後、他の場所に水分があるかどうかも含め、追加の観測を行う予定です。
月の水に関する研究はNature Astronomyに掲載されています。

水の分子があれば飲料水やロケットの燃料などに利用できるな

月を拠点にしてもっと遠い星にも行けるようになるね
Reference: NASA