再評価の動き、人類の滅亡を予測した50年前のプログラム「World1」

歴史

1970年代初頭、米国マサチューセッツ大学(MIT)の研究者が、世界の持続性をシミュレーションするプログラム「World1」を開発しました。

その時点での利用可能なデータを使って未来を予測するプログラムであるWorld1は、世界中の科学者や経済人、教育者で構成される組織「ローマクラブ」の要請によって作られました。

50年前のコンピューターが予想した未来は――残念ながら――現在とそれほどかけ離れていません。

 

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システムダイナミクスを取り入れた「World1」の未来予測

 

世界中の知を集めたローマクラブは、人類と地球の未来がどうなるのかを知りたがっていました。

システムダイナミクスの父と呼ばれるジェイ・フォレスターによって作られたWorld1は、経済、社会、自然といった通常のシミュレーションで利用される要素だけでなく、「汚染レベル」、「人口増加」、「天然資源の利用可能性」、「生活の質」といった文明の質を決める変数を追加することで、よりリアルな未来を予測できるよう設計されました。

斬新な手法を用いたWorld1によるシミュレーションは、文明の一つの転換点に2020年を挙げ、人口や資源の減少、公害の増加などを防げなければ人類は壊滅的な被害を受けるだろうと警告しました。

 

オーストラリアのABCニュースは、当時放映されたWorld1による未来予測の映像を公開しています。

 

Computer predicts the end of civilisation (1973) | RetroFocus

 

World1は次のような具体的な地球の未来を予測しました。

 

・人口は1980年代まで上昇し、その後減少していく。
・人口の増加と共にQOL(クオリティ・オブ・ライフ-生活の質)が下がっていき、2020年代にはゼロを下回る。
・天然資源はゆっくりと確実に減少していく。
・人口増加によって汚染が進み、2020年までに多くの人間が公害によって死亡する。

 

最終的にシミュレーションは、対策をしなければ、人類の文明的な生活は2040年から2050年の間に崩壊するだろうと結論づけました。

 

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未来予測に対する批判と再評価

 

 

ローマクラブはWorld1の衝撃的なシミュレーションを受けて「成長の限界」と題する研究結果を発表し、その後別の変数を加えた新たなコンピューターモデル「World3」を作りました。

「人口増加」、「農業生産」、「工業生産」、「再生不能な天然資源の消費」、「公害の発生」の5つの要素が加えられたWorld3による新たなシミュレーションは、文明の滅亡を2072年と予測しました。

 

具体的な数字を出して人類や文明の滅亡を予測した「成長の限界」は、当時のメディアから大きな批判を浴びます。

ニューヨークタイムズは、「コンピューター技術とシステムの専門用語は、恣意的な前提を持っており誤解を招くおそれかある」と書き、読者に予測を鵜呑みにしないよう注意を呼びかけました。

 

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当時ほとんどの人に理解されなかったWorld1とWorld3の予測は、現代に入り再評価されるようになっています。

メルボルン大学の社会研究所の研究員であるグラハム・ターナー氏は、2014年に国連やアメリカ海洋大気庁などのデータをWorld3に挿入し、改めて未来予測を行っています。

結果は、当時のWorld3の予測にかなり近いものでした。

ターナー氏は、現代のデータを使った予測が50年前とそれほど変わらないのは、World3のプログラムの欠陥によるものかもしれないとしながらも、この結果が即人類の滅亡を表すわけではないと強調しています。

 

一方で50年前の予測は、今まさに現実になっていると指摘する声もあります。

英国の新聞ガーディアンは、1972年にMITの研究者が予測したような未来が展開するとは限らないが、戦争が勃発する可能性はあると警告しました。

ガーディアンの記者は「飽くなき成長への追及は深刻な悪影響を及ぼす」と書き、World1とWorld3の予測した未来は人類への警鐘であると結論づけています。

 


 

 

ふうか
ふうか

予想が外れてる部分もあるが、文明の崩壊が着実に進んでいるのは確かかもしれん

しぐれ
しぐれ

最新のデータを使ってもう一回予測してほしいね、ちょっと不安でもあるけど

 

 

 

References:In 1972, a computer model predicted the end of the world — and we’re on track