古代エジプトの謎のとんがり帽子、“ヘッドコーン”の実在が確認される

歴史
© Antiquity Publications Ltd, 2019

古代エジプトの芸術品には多くの衣服や装飾品が登場し、それらのほとんどは考古学者にとって理解の範疇にあります。

しかし中には困惑させるようなものもあり、なぜそれがそこにあるのか、といったような問いにいまだ明確な答えを出せていないものもあります。

ヘッドコーン(Head Cones)」と呼ばれる円錐型の帽子もその一つです。

 

古代エジプトの壁画や棺に描かれた絵の中には、頭の上に帽子のような円錐形の物体を乗せた人物が登場します。

しかし実際のミイラがこのヘッドコーンを被っていた例はなく、考古学者はこの帽子が絵の中だけの特別な表現であり、象徴的な何かを示しているものと考えてきました。

例えばキリスト教の美術に見られる光背(こうはい、ヘイローとも)は、キリストや高貴な人物の頭の後ろに円形の光が描かれます。

光背は見る人にとって誰がキリストや使徒であるのかが一目でわかるという利点があります。

また仏教など他の宗教美術でも、頭の後ろの光や体全体から光を放つといった表現が見られるため、古代エジプトのヘッドコーンもそうした象徴的な表現の一つであるという見方が大勢を占めていました。

 

しかし最近発見されたミイラは関係者のそれまでの常識を覆すものでした。

2010年と2015年に発見されたミイラは、確かにヘッドコーンを被っていました。

 

スポンサーリンク

 

実在した謎のとんがり帽子、ヘッドコーン

 

頭の上の円錐形の帽子のようなものがヘッドコーン © Antiquity Publications Ltd, 2019

 

考古学の査読付きジャーナル「Antiquity」に掲載された研究は、これまで芸術の中だけの表現とされてきた古代エジプトのヘッドコーンが、実際に人々によって利用されてきたことを明らかにしています。

ヘッドコーンを被ったミイラは、2010年と2015年にエジプトのアマルナにある遺跡で発見されました。

アマルナは当時のファラオであるアメンホテプ4世が建設し、「アケトアテン」という名で呼ばれていた都市です。

アケトアテンは紀元前1347年頃に建てられたものの、紀元前1332年頃に放棄された歴史の短い都市です。

この都市には一般の人を含む何千という墓があり、ヘッドコーンを被った2人のミイラはその中から見つかりました。

 

2010年に発見された女性のミイラは良好な状態を保ったままで、髪も残っていました。

彼女の頭の上には、虫食いがありながらも円錐形をした帽子のようなものの存在が認められました。

 

© Antiquity Publications Ltd, 2019

 

もう一つの2015年に発見されたミイラは、かなり崩壊が進んでいたものの髪は残っており、その成分分析から、このミイラの頭にも円錐形の帽子がかぶさっていたことが明らかになっています。

これら2つのミイラの発見は、これまで芸術の中だけの表現とされてきたヘッドコーンが実際に人々の間に存在し、埋葬時に利用されたことを表すものです。

またこのミイラが一般の人たちが眠る墓で発見されたことは、ヘッドコーンが当初考えられていたような、高貴な人物にだけ許された特別なものではないことも示しています。

 

研究者は、「2つのヘッドコーンの発見は、これが古代エジプトで時々死者に着用され、またこれらのオブジェクトへのアクセスが、上級エリートにだけ許されたものではなかったことを表すものだ」と書いています。

 

スポンサーリンク

 

ヘッドコーンと来世に抱く希望

 

ヘッドコーンを着けたミイラが発見されたことで、これが聖人や偉人、王などを表す芸術的な表現ではないことが分かったものの、それでもこの形状が何のため、そしてどういう目的で利用されたのかについては多くの疑問が残っています。

研究者たちはヘッドコーンの分析から、それが植物や動物に由来するワックス(蝋)で出来ており、時間が経った後に溶け出すことで、ミイラの髪や体を浄化する役割があったのではないかと考えています。

ヘッドコーンはエジプトのミイラ作成に使われた没薬(もつやく)のような役割があり、防腐処理や香料として利用された可能性があります。

しかしそれでも、ヘッドコーンがなぜこの形をしているのかについての明確な答えは見つかりません。

 

研究者は墓の中にピンセットや櫛、鏡、アイペイントや宝石などが一緒に残されていた点を挙げ、ヘッドコーンが死後に自分を最高によく見せるための道具の一つだったのではないかと推測しています。

またこの帽子が死者のためだけでなく、普段の生活や、儀式やお祝いの時にも利用されていたのではないかと書いています。

 

 

 


 

古代エジプト人は死後の世界に希望を抱いていたため、例え高貴な人物でなくてもできるだけの装飾品をもって死の世界へと旅立ちました。

死者が来世でも着飾ることができるように、墓には数々の小物が埋葬されました。

 

なぜ古代エジプト人が、頭に円錐形の帽子をかぶったのかは結局のところ分からないままです。

しかし人々が命のよみがえりだけを望んでいたわけではないことは確かです。

ヘッドコーンは、来世という希望に向かう旅の、美しく着飾る正装のようなものだったのかもしれません。

 


 

 

かなで
かなで

プリンを乗せてるみたいだねー!へんなのー

しぐれ
しぐれ

何でこの形なのかはまだよくわかっていないみたいだよ

せつな
せつな

現代人が考えすぎで、単に当時の流行だっただけという可能性もある……

 

References: CNN,ScienceAlert