人類の火星への入植は、近年の宇宙科学分野において最も熱いトピックの一つです。
NASAをはじめとした宇宙機関は、月を足掛かりに火星へと向かう計画を立てており、その実現はすぐ目の前に迫っています。
とはいえ火星への道のりは長く険しいものであり、孤独に耐えようやく到着したとしても、今度は、何もない赤い大地で生命を維持し続けるという難しい課題に直面することになります。
火星の入植者が生き抜くためには他のメンバーとの協力が欠かせず、過去の研究では、コロニーを維持させるために数百人が必要であることが示されました。
しかしこれだけの数を火星に送り込むのは、輸送コストの面で現実的ではありません。
ではコストを抑えつつ入植を成功させ、後の発展の礎を築くためには、一体どれだけの人数が必要になるのでしょうか。
新しい研究は、入植者の性格タイプが、コロニーの発展に大きく関わっていることを明らかにしています。
火星という新たなフロンティアで、生活を維持していくために必要な最小人数は、22人です。
コロニーの健全性を左右する入植者の性格
プレプリントサーバーのarXivに掲載された研究は、火星の移住に必要な最低限の人数を導き出すために、エージェントベースモデル(ABM)と呼ばれるアプローチを使用しています。
ABMは、複数のエージェントがそれぞれの活動をし、その相互作用が全体にどのような影響を及ぼすのかを予測するものです。
火星での生活は、地球のそれとは比べものにならないくらい過酷であり、入植者は、自分の適性にあった仕事をしながらコロニーを維持していくという責務を負うことになります。
この際、入植者間で問題が発生すると、そのレベルによってはコロニーの崩壊を招く一大事にまで発展する可能性があり、そうなった場合、火星での任務は悲劇的な最後を迎えるかもしれません。
研究では4つの性格特性を設定し、ABMによるシミュレーションを行いました。
性格特性は次の通りです。
1・競争心と攻撃性が低く、固定観念も少ない。協調性がある。
2・社交的で適度な競争心がある。社会的交流を必要とするが固定観念は少ない。
3・反応型で適度な競争心がある。交流において競争があり日常的な執着をもつ。
4・神経質で競争心が強い。交流では攻撃的であり、執着心が強く退屈を嫌う。
これらの性格特性は、潜水艦や極地、宇宙ステーションなどの高ストレス環境での人間の行動データを基に作られており、シミュレーションではこれらを組み合わせながら、コロニーの発展に必要な人数を検証していきました。
様々な設定は、5回ずつ最長28年間にわたってシミュレートされました。
その結果、火星でコロニーを確立するのに必要な最低限の人数は22人であることがわかりました。
火星での生活がうまくいくかどうかは、スキル以上に入植者の性格が大きく関わってくる (Credits: Zopherus)
コロニーを安全に長く維持するには、入植者のスキル以上に、その性格特性が重要になりました。
上に挙げた性格特性のうち、火星で最も長く生き残るのは、攻撃性が低く協調性のあるタイプで、最も死亡しやすいのは神経質で攻撃的なタイプでした。
神経質なタイプは協調性が低いがゆえにコロニーをかき回し、それが他のタイプよりも高い死亡率につながりました。
コロニーは、攻撃性が高く協調性の低いタイプが少なくなるほど安定しました。
地球とは異なる環境での共同生活が、入植者に多大なストレスをもたらすのは必然です。
しかしそのストレスをうまく扱うことができなければ、最終的にコロニー全体が危機に陥る可能性があります。
シミュレーションでは、協調性のあるタイプが最も長く生き残りました。
これはこのタイプの人たちが、火星への長期間の旅を含む様々なストレスに対し、高い処理能力を持っていることを表しています。
人類の火星への入植を成功させるには、物資や乗組員のスキル以外に、性格の問題についても検討する必要があります。
研究者は、「将来の入植者は、技術的および工学的な課題だけでなく、人間の心理的な行動という課題にも直面することになる」と述べています。
![せつな](https://shigurechan.com/wp-content/uploads/2018/10/-デフォ-e1540584411510.png)
どこにいたって人が集まればトラブルは発生する……
![ふうか](https://shigurechan.com/wp-content/uploads/2018/10/-デフォ-e1540675418994.png)
地球と違って火星には逃げる場所がないから、性格が合うかどうかは大事な要素と言えるな
References: arXiv,ScienceAlert