ドイツ航空宇宙センター(DLR)は2019年5月、国際宇宙ステーション(ISS)に新たな酸素供給装置を納入しました。
「フォトバイオリアクター (Photobioreactor)」と呼ばれる装置は、藻の光合成により、宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素を酸素に変換するもので、食べ物としても利用できます。
限られた資源とスペースを有効利用し、宇宙飛行士の生命維持を助けるフォトバイオリアクターは、将来の宇宙開発にとって欠かせないアイテムになる可能性があります。
クロレラを使った生命維持装置「フォトバイオリアクター」
今回SpaceX社の宇宙船でISSに向かったフォトバイオリアクターは、2018年に納入された生命維持システム「ACLS (Advanced Closed-Loop System)」を補佐するように設計されています。
ACLSは、ISS内の二酸化炭素からメタンと水を作ることができますが、変換率に改善の余地があります。
フォトバイオリアクターは、ACLSが変換できなかった残りの二酸化炭素を有効利用し、酸素と食料を生み出します。
フォトバイオリアクターのプロジェクトリーダーであるDLRのオリバー・アンゲラー氏は、「この二つの装置は生命維持の最前線だ」と述べ、「ISSでの実験は、将来の惑星探査や基地局の建設の基盤となり得る」と強調しています。
フォトバイオリアクターは高さ1メートル、幅2メートルほどの大きさで、現時点ではISS内の全ての酸素を賄うことはできません。
科学者は、今回の実験で得られたデータを元にさらなる研究を続け、将来的には、宇宙船や建造物の壁に埋め込むような形での利用を目指しています。
フォトバイオリアクターの酸素は、藻の一種である「クロレラ」によって作られます。
健康食品としても知られるクロレラは、高い耐久力をもち少ない資源で育てることができるため、宇宙空間での栽培に適しています。
また光合成に使われたクロレラは宇宙飛行士の栄養源にもなります。
DLRはフォトバイオリアクターのクロレラについて、一日の必要エネルギーのうちの30%程度を補うことができるとしています。
フォトバイオリアクターの実験は6カ月間行われる予定です。
未来の宇宙飛行士は壁から栄養を摂るようになるのかもしれないな
クロレラをおいしくする技術も同時に開発してほしい……
Reference: DLR