とりあえずすごい!ということはわかるのですが、そもそもなぜ太陽に向けて探査機を送るのか、またどうして最接近距離の更新がニュースになるのか、案外知らない部分も多いニュースだと思います。
パーカーソーラープローブの性能や太陽が私たちに及ぼす影響、そして太陽探査の意義などについてみていきます。
太陽ってそもそもなんなんですか?
まずなぜ太陽に向かう必要があるのかという部分を知る前に、太陽そのものについて少しおさらいしてみましょう。
いきなりど真ん中を突いてきたな
……何事も基本が大事っていつもお姉ちゃんが言ってるでしょ
一応我々は宇宙からやってきたのだ、太陽のことくらい知っておかなければ長い航海には耐えられまい
い、いや……宇宙船は故障中だから地球でこうして情報収集してるんだけどね……
毎日休みなく昇っては日の光をもたらす太陽ですが、あまりに当然すぎて分からないことも多いと思います。
ここで簡単に太陽の概要を説明してみますね。
恒星というのは星の中でもひときわ大きくガス体の天体でとてつもない重力を持ち自ら光を発します。
……よくわかりませんね。
簡単にするとつまりはこうなります。
太陽は自分で光を放ち、超大きく、重力により周囲に数々の天体を従えている、こんな感じになります。
なぜこんな形になったのか、とか、どうして重力が大きいのかなどについてはあまりに専門的なのでここでは触れません。
ちなみに太陽というのは固有名詞ではなくて、宇宙にはいろんな惑星系があり、その中心に位置する恒星をやっぱり太陽と呼んだりします。
大体地球の109倍ほどの大きさがあります。
質量は地球の約33万倍、太陽系の全質量の99パーセント以上が太陽の質量になります。
地球だってとてつもない大きさだと思いますが、太陽に比べたらほんの点みたいなものなんですね。
太陽フレアと呼ばれる爆発現象がほぼ毎日起こっています。
フレアの大きさはさまざまですが、大きいものでは地球の直径よりも大きいものもあるそうです。
また太陽表面の温度が数千度なのに対し、表層よりも上の層に存在するコロナという光は100万度以上の熱を持ちます。
そのメカニズムについてはまだよくわかっていません。
そ、そんなに大きいエネルギーだったら地球にも影響があったりしないのかな?
地球は大気の層で防御しているからな、そうそう影響はないのではないか
じゃあ、なんでそんな危なくて熱そうなところに探査機を送ったりするんだろう?
地球には厚い大気の層があり、太陽や宇宙からやってくる放射線などの有害物質を防いでくれています。
また隕石などの落下物もそのほとんどが地上に到達する前に燃え尽きてしまい、地上に影響が出ることもほとんどありません。
わたしたちが太陽に対して何かすることがあるとすれば、せいぜい真夏に日焼け止めを塗るくらいでしょう。
だったら何もわざわざお金と人的資源を投じて太陽の近くまで探査機を飛ばす必要などないのでは……?
太陽フレア荒ぶる!
誰にも機嫌が悪かったり愚痴をこぼしてみたりしたいときがあるように、毎日地球を照らしてくれている太陽にもちょっとしたご機嫌斜めな時期があるのです。
それが太陽フレアのもっと大きいバージョン……太陽嵐!(たいようあらし)
太陽嵐のイメージ
太陽が荒ぶると地球の大気を突き抜けていろんな被害をもたらすということなのです。
太陽フレアはX線や荷電粒子、磁化プラズマなどを放出し、そのなかでもコロナ質量放出と呼ばれるプラズマの塊が放出される現象では、電気系統が壊滅的なダメージを受けるとされています。
電気が使えなくなるといろいろと困るよね……
宇宙で生き残るためには電気に頼らないサバイバル術が必要だな
お姉ちゃんはいいけどわたしにはちょっとそれは無理かな……
今年は台風がとても多かったですよね。
また甚大な被害が各地で出て生活が大変になったのも記憶に新しいところです。
地球の局所的な災害でも人間は自然の前ではなすすべもなく途方に暮れてしまうものです。
ましてや地球よりも大きいエネルギーの塊である太陽が本気を出したら……わたしたちは想像もつかない事態に陥ることになるかもしれません。
だったらそんなことが起こる前に対策をたてようじゃないか!
人間は過去に学び未来を築いていく存在。
その任務を任されたのが今回記録を達成した太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(parker solar probe)」なのです。
太陽に向かう「パーカー・ソーラー・プローブ」
「パーカー・ソーラー・プローブ」は2018年8月12日、フロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げられました。
主な探査目的は太陽コロナの調査や太陽風との関係、エネルギーの流れや加速の仕組みの解明などです。
太陽コロナは太陽の表面よりも上層にあるガス層のこと。
先述したように太陽の表面は約6000度なのに対し、太陽コロナは100万度以上もの熱があることが知られていますが、どうしてそんなに温度の差があるのかはまだよくわかっていません。
太陽風や太陽嵐の発生についてのデータを得ることができれば、今後地球に甚大な被害をもたらすと予測される事態に最善の対策をとることができるようになるかもしれません。
しかしそんな熱い太陽に近づくことなどできるのでしょうか。
ちょっと待って……そんな高温の太陽を調査するんだから近くまで行くってことでしょ?探査機が溶けちゃったりしないのかな?
安心しろ、そこは現代の技術の粋が込められているのだ、問題ない
「パーカー・ソーラー・プローブ」には太陽の高温に耐えるためのいくつもの仕掛けが施されています。
厚さ11センチになる特殊素材でできた耐熱シールドが観測機器を太陽の熱から守ります。
また太陽の熱を反射する素材も含まれているのでさらに熱が届きにくい設計になっています。
本体から突き出たセンサーにより観測機器の姿勢を制御することで、常に耐熱シールドの影で仕事ができるようにしてくれています。
本体内部には冷却水を循環させるシステムが内蔵されていて温度を一定に保つよう調節しています。
これらの最新技術を搭載した「パーカー・ソーラー・プローブ」は、約7年をかけて太陽の周りを周り、貴重なデータの収集を行う予定です。
そしてもう一つのニュースはパーカー・ソーラー・プローブが太陽に最接近した人工物の記録を塗り替えたことです。
これまでの記録保持探査機は1976年に打ち上げられたヘリオス2号でした。
太陽のような巨大な星を周回するためには重力に負けない速さを必要とします。
ヘリオス2号は時速約24万キロを記録しましたが、「パーカー」は打ち上げから78日後に太陽表面から約4270万キロの位置まで接近、その10時間後にはヘリオスのスピードを塗り替える新記録を打ち立てました。
「パーカー」はこれから26回にわたり太陽に接近を続けデータを収集します。
最終的には太陽から約600万キロ付近にまで近づくそうです。
この時に重力に飲み込まれないで周回を続けるのに必要な速さは時速70万キロ以上!
これは地球から月までを30分で移動できるくらいの速さですから、とてつもないスピードということになりますね。
これだけの技術を地球人が保有しているのなら、我々の宇宙船を修理してもらうという手もあるな
とてもいい案だと思うけど……いくらお金がかかるのかな……
「パーカー・ソーラー・プローブ」が地球を救う!
技術の粋と科学者、そして人類の期待を載せて難関ミッションに挑む「パーカー・ソーラー・プローブ」。
宇宙はまだまだ分からないことだらけですが、地球にとって最も身近な存在である太陽の謎に少しでも迫ることができれば、いずれは太陽系やほかの惑星、そして宇宙全体の理解へと進んでいくことができるでしょう。
ほんの小さな一歩ですが、地球や人類にとっては大きな成果になりうるミッション。
そこに果敢に挑む「パーカー・ソーラー・プローブ」に心からのエールを送りたいと思います。
「パーカー」がんばれー!
「パーカー」さんにはケガをしないでがんばってほしいな~♪
そうだな、そして我々の宇宙船の修理にも手を貸してくれるともっとありがたい
だ、だからそれはお財布の関係でむりだよ~
以上、太陽と太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」についてのお話でした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
Reference:NASA