ESA(欧州宇宙機関)の宇宙望遠鏡「ユークリッド (Euclid)」が7月1日、米国フロリダ州にあるケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。
古代ギリシャの幾何学の父にちなんで名づけられたユークリッドは、全天の3分の1以上の領域と何十億もの銀河を観測するために設計された望遠鏡で、宇宙の正確な3D地図を作成することで、未知の物質である暗黒エネルギーおよび暗黒物質に関するデータを収集します。
暗黒エネルギーと暗黒物質は、宇宙の質量や膨張を説明する際に引き合いに出される仮説上のエネルギーのことです。
科学者によれば、全宇宙のエネルギーのうち、重力に反する作用を持った暗黒エネルギーは70%、光に捉えられず見ることのできない暗黒物質は25%、その他(私たちが観測できる全ての物質)が5%です。
ユークリッドについて、ESAの科学ディレクターであるキャロル・マンデル氏は、「私たちが住んでいる宇宙を理解したいなら、暗黒エネルギーと暗黒物質の性質を解明し、それらが宇宙の形成に果たした役割を理解する必要があります。ユークリッドはこれらの疑問に答えるために、銀河系外の空の最も詳細な地図を提供します」と述べています。
Our #Euclid spacecraft lifted off on a @SpaceX Falcon 9 rocket from Cape Canaveral Space Force Station in Florida, USA, at 16:12 BST/17:12 CEST on 1 July.
— ESA (@esa) July 1, 2023
🔗 https://t.co/pfPJKRTmHM pic.twitter.com/F1JCdJisKr
ユークリッドには直径1.2メートルの反射望遠鏡と、2つの革新的な科学機器が搭載されています。
ユークリッドに搭載されている2つの科学機器 (Credit: ESA)
「VIS (VISible instrument)」と呼ばれる光学カメラは、100億光年先までにある10億以上の銀河の形状を測定します。
銀河は重力の影響を受ける光によってそれぞれ見え方が異なりますが、VISは光の波長を広範囲に検出することで、各銀河の大きさや相対的な位置を正確にマッピングすることができます。
もう一つの機器は、NASAが開発に関わった「NISP (Near-Infrared Spectrometer and Photometer)」と呼ばれる分光器で、光の波長のずれ(赤方偏移)を測定し、銀河までの距離を推定するのに役立ちます。
科学者はこれらの機器から得られたデータを元に、光が受けた重力の影響を計算し、暗黒エネルギーや暗黒物質が宇宙にどのように遍在しているのかについて、より深く推察することが可能になります。
15億ドルを投じたユークリッドは少なくとも6年間稼働する予定で、望遠鏡は地球から150万キロ離れたラグランジュ点L2に到着後、機器の点検を経て本格的な運用に入ります。
取得されたデータはヨーロッパ、アメリカ、カナダ、日本などの2000人以上からなる科学者グループ、「ユークリッド・コンソーシアム」によって分析されることになっています。
ユークリッドのデータは毎年公開されて、誰でもアクセスできるようになるそうだ
宇宙の95%が未知の物質でできてるなんて不思議だね~
Reference: ESA