電子機器の修理を行うベンチャー企業iFixit(アイフィックスイット)が、マクドナルドのアイスクリームマシンにまつわる法律について、改善を求める嘆願書を議会に提出しました。
iFixitはこれまで、スマートフォンやゲーム機などの修理マニュアルを公開したり、扱いやすい工具を開発するなど、修理という行為を一般レベルに引き下げるための活動を続けてきました。
しかし電子機器の修理は、法律によっては著作権侵害にあたり、個人が中身を取り出したり部品を交換したりすることができない場合があります。
これは企業が扱う様々な機械にも当てはまり、一見簡単に直せそうな故障でも、修理業者以外では、ねじ1つ変えられないといったことが起こります。
iFixitが槍玉にあげているのは、全国のマクドナルドに設置されているアイスクリームマシンです。
iFixitによると、マクドナルドのアイスクリームマシンの約10%は常に故障していますが、修理はそれを製造したTaylor(テイラー)という会社を通してでしかできません。
機械は故障の状況をエラーコードとして吐き出すものの、内容については秘匿されているため、故障の度に業者を呼ぶ必要があります。
iFixitは今回、実際にこのアイスクリームマシンを購入し、それを分解したうえで、なぜ修理を一般の人に開放すべきなのかを解説しています。
アイスクリームマシンの修理を妨害する法律
アイスクリームマシンの修理を限定的なものにしているのは、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)と呼ばれる法律です。
この法律には、「デバイスのソフトウェアロックをバイパスすること」を違法とする条項があります。
これは、機械の製作者以外は内部に干渉できないことを意味しており、この法律のためにオーナーは、毎回15分あたり315ドルの出張料をTaylorに支払っています。
iFixitによると、Taylorの利益の25%は、修理の出張料からきています。
分解により、このアイスクリームマシンの問題がいくつか浮かび上がりました。
1つは、連続使用によって内部が過熱し、システムがシャットダウンすることです。
機械は電源を入れて稼動状態になるまでに4時間を要するため、シャットダウンが起こるとアイスクリームを売ることができなくなります。
これは客単価の減少につながります。
マクドナルドのアイスクリームマシンを追跡しているサイト「McBroken」によると、都市部の20~25%の店舗で、常に故障が発生しています。
多くの地域の店舗でアイスクリームマシンが故障している。赤丸が故障中 (McBroken)
もう1つはエラーコードの数の多さです。
故障の原因は様々ですが、オーナーはそれらの内容について知ることができないため、結局は修理業者に頼らなければなりません。
この問題については、以前、別の企業が助け船を出しました。
Kytchという企業は、店舗の人間でもエラーコードを読み取れる簡易な製品を開発しました。
これは多くのオーナーにとって、修理関連の支出を減らすことのできる魔法のアイテムでした。
しかしマクドナルドとTaylorは、この製品に「安全上の危険がある」として、すぐに使用をやめるよう通達を出しました。
iFixitと非営利団体であるPublic Knowledgeは、議会に対し、アイスクリームマシンの修理ツールの配布を認める「修理自由法」を導入するよう求めています。
これはDMCAを見直し、ツールを合法化することで、アイスクリームマシンを誰もが修理できるようにするためのものです。
現時点では企業側が、修理ツールの配布を阻止することができます。
Public Knowledgeの政策顧問であるキャスリーン・バーク氏は、「消費者向けか商業用かにかかわらず、原則として著作権は、その所有者の機器の修理を妨げるべきではありません」と述べています。
iFixitは分解の結果から、アイスクリームマシンには簡単に交換可能な部品がたくさんあると結論づけています。
マクドナルドとTaylorは創業以来のつきあいがあるんだって
気軽に修理できるようになれば、アイスを買いに行ってがっかりすることもなくなる……