人間の手は雑菌で満ち溢れています。
定期的に手を洗うことは、自分だけでなく、周囲にいる家族や仲間の健康をも救う重要な生活スキルです。
学校の教師は子供たちに、手を洗うことがどれだけ大事なのかを口酸っぱく教えようとします。
しかし子供たちは自分たちの世界に夢中なため、手洗いの優先順位は常に後ろの方にあります。
どうすれば子供たちに手洗いの重要性をわかってもらえるのだろう――頭を悩ませていた小学校教師は、あるアイデアを思いつき早速実行してみることにしました。
その単純な方法は驚くほどの効果を発揮しました。
結果を見れば子供はもちろん、手洗いが嫌いなどんな人であってもすぐに洗面所に駆け出していくことでしょう。
最も効果的な手洗い方法、それは温水と石鹸
米国アイダホ州アイダホフォールズにあるディスカバリー小学校で、ある面白い実験が行われました。
実験を考えたのはデイナ・ロバートソン先生と行動専門家のジャラリー・メトカーフ氏で、二人の目的は子供たちに「手洗い」の重要さを知ってもらうことにあります。
実験内容は、様々なレベルの“汚い手”で食パンに触れてもらい、それを一か月間密封してどうなるのかを見てみよう、というものです。
ロバートソン先生のクラス全17人がそれぞれの手を食パンに押し付け、さらに授業で使っているChromebook(パソコン)にもパンをこすりつけました。
生徒が触れたパンはジップロックに密封され、空気がパンの変化に影響を与えないようにされました。
できたサンプルは、「手を洗っていない人が触れたパン」「手指消毒剤で洗った手で触れたパン」「温水と石鹸で洗った手で触れたパン」「誰も触れていないパン」「Chromebookをこすったパン」の5種類です。
はたして一か月後のパンの状態はどのように変貌していたのでしょうか。
まず当然といっていい結果なのは、誰も触れていないパンにはほとんどカビが見られないことです。(これらのパンは焼かれてから一カ月たっているので全体的に薄くカビが発生しています)
次にChromebookをこすったパンは……あぁ、とてもひどいことになっています!
Chromebookに触れたパン。パソコンはばい菌でいっぱい! Credit: Jaralee Annice Metcalf/Facebook
パン全体にカビが広がり、パソコンがいかにばい菌に満ちているかがよくわかります。
次に手洗いしていない手で触れたパンですが、まあ……予想どおりの結果でしょう。
手洗いしない手で触れたパン。汚い! Credit: Jaralee Annice Metcalf/Facebook
パンの中央部がひどくみえるのは、子供たちがこの部分に手を押し付けたからです。
カビの進行具合は異なるものの、手全体がばい菌に溢れていることの証拠と言えます。
次の結果は人によってはいささかショックかもしれません。
手指消毒剤で洗った後に触ったパンもこのとおり。Credit: Jaralee Annice Metcalf/Facebook
手指消毒剤で洗った手で触れたパンにも、手洗いしていないパンほどではないものの、カビが発生していました。
これについてメトカーフ氏は、「手指消毒剤は手を洗うことの代わりにはなりません」と自身のFacebookに書き、「これ(手指消毒剤)はとんでもなく最低なものだ!」と怒りをあらわにしました。
手指消毒剤は簡単に手に入りまた使いやすいものですが、少なくとも食事の前の手洗いの代わりにはならないようです。
最後に残った温水と石鹸で洗った手で触れたパンは、誰も触れていないパンに匹敵するほどきれいなままでした。
温水と石鹸での手洗いが最も効果的。 Credit: Jaralee Annice Metcalf/Facebook
この実験は子供たちの行動を即座に変えました。
ロバートソン先生は、子供たちは豹変したパンの姿を見てとてもひどいと感じていた、と語り、実験が彼らの手洗いの習慣を本当に変えたと振り返りました。
また手指消毒剤が雑菌をカットしないことを知った子供たちが、石鹸と水での手洗いの重要性に気づいたとも付け加えています。
11月4日から始まった実験の結果はメトカーフ氏のFacebookに掲載され、インフルエンザの季節も重なり、現在66,000回以上シェアされています。
パンを使って手洗いの重要性を訴えかけた実験には、アメリカの多くの学校から反響があり、自分たちのクラスでもこれをやるつもりだ、といったコメントが寄せられています。
メトカーフ氏は、子供たちが手を洗わないことは、教師や家族が犠牲になることにもつながると述べ、親に対して、子供たちに手洗いの重要さを思い出させるよう強く促しています。
手指の消毒だけでは不十分というのは意外な結果だな
やっぱり手全体をしっかり洗うのが一番なんだね~
仕方ない……面倒くさいけど手を洗いに行こう……
References: Today