2019年の後半に突如現れた健康法に、「肛門日光浴」と呼ばれるものがあります。
これは読んで字のごとく、肛門の周囲を太陽にさらす日光浴のことで、毎日短時間行うだけで元気になるとされています。
この健康法はSNSを中心に広がり、インスタグラムには、股を大きく広げ肛門を太陽にさらす人々が数多く出現しました。
世に健康法は数あれど、肛門日光浴ほど奇妙なものはありません。
オーストラリアの皮膚の専門家は、肛門日光浴には期待されている効果がないだけでなく、様々なリスクを伴うおそれがあると警告しています。
肛門を太陽にさらしても健康にはならない
肛門日光浴のルーツははっきりしていませんが、考え方は道教の教えから来ていると推測されています。
人々が健康になれると信じて太陽にさらす肛門付近は、「会陰」と呼ばれます。
道教において、会陰はエネルギーの出入り口にあたる部分であり、太陽は生き物のエネルギー源です。
つまり会陰を太陽に向ける行為は、太陽のエネルギーをより効果的に吸収するという意味合いを持っています。
肛門日光浴を実践している人たちは、具体的な効果として、睡眠の改善や豊かな創造性、さらには健康的な性欲などを挙げます。
しかし残念ながら、肛門日光浴が健康に良いとする研究結果は存在しません。
シドニー大学の皮膚科教授であるガイル・フィッシャー氏は、実践者の主張する効果はプラセボの可能性があると指摘し、「もし将来の研究で肛門日光浴の利点が明らかになったとしたら、私は非常に驚くだろう」と述べています。
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実際、肛門を太陽に向ける行為は安全なのでしょうか?
肛門とその周囲は、人間の体のなかで最も日の光を浴びてこなかった部分です。
人間の皮膚は太陽の紫外線を浴びた際、メラニンを形成し日焼けのリスクを減らします。
しかし肛門の周囲はそうした状況に慣れておらず、また皮膚も敏感なため、短時間の露出であっても火傷を負う可能性が高くなります。
この部分が日焼けをすると非常に痛み、約一週間の間、パートナーとの行為や排尿などに支障をきたすおそれがあります。
紫外線は発がん性物質であるため、現代においては、どんな種類の日焼けであっても推奨されません。
肛門付近を太陽にさらした場合、この領域で発生しやすい特定のがんを誘発する可能性もあります。
肛門日光浴は、その言葉の響きと何とも言えないシュールな格好から、いまだ人々の興味をひきつけています。
フィッシャー氏は、「数分だけ試すのはおそらく危険ではないし、日焼け止めを塗ってもいい」としながらも、実際には何の効果もないばかりかリスクも伴うため、「肛門日光浴を勧めることはできない」と強調しています。
エネルギーを得るために、わざわざ肛門を太陽に向ける必要はありません。
もっと元気になりたいのであれば、睡眠時間を十分に確保し、定期的に運動し、健康的な食事をとるという簡単で効果的な方法があります。
肛門を恥ずかしげもなく太陽にさらせる人はすでに健康なのでは……?
科学的な根拠がなくてほっとしたよー
Reference: The Conversation