米国スタンフォード大学の研究者はMRIを使った脳の分析から、孤独な人の他者への距離感が、親しさの度合いとは関係なく均一であることを発見しています。
人間は通常、他者を親密さの度合いでランク付けしています。
家族や親友と、同僚や知人、道ですれ違う人、テレビの中の有名人ではそれぞれ感じる親しみが異なります。
新しい研究は、孤独であると感じている人が、自分以外の全ての人を同列に見ていることを明らかにしています。
孤独な人の距離感はどんな相手であっても同じ
スタンフォード大学の心理学者は、知人や会社の同僚といったそれほど親しくない人たちとの「弱いつながり」が、人間の健康にどんな影響を及ぼすのかについて研究しています。
弱いつながりが健康や幸福にとって欠かせないものであることは、いくつかの研究で明らかにされていますが、脳がこれらのつながりをどう理解しているのかはよくわかっていません。
このメカニズムが解明されれば、孤独に悩む人の健康の改善に役立つ可能性があります。
研究では、MRIを使って自己表現に関連する脳の領域である内側前頭前皮質(MPFC)を観察しました。
研究に参加したのは18歳から47歳までの43人で、彼らは脳をスキャンする際に、自分自身を含む16人について思い浮かべることを求められました。
内訳は、5人の親しい友人や家族、5人の知人、5人の有名人、そして自分自身です。
研究者はそれぞれの他者に集中するよう被験者に依頼したうえで、脳の活動が相手によってどう変わるのかを記録していきました。
それらのデータは、自分自身に集中した際の脳の動きと比較されました。
その結果、親しい人を思い浮かべたときの脳の動きが、自分のことを考えているときの動きと似ていることがわかりました。
しかしこの傾向は、自分を孤独だと感じている人には見られませんでした。
彼らの脳は、家族や親友といった近しい人も、赤の他人や有名人と同列に扱っていました。
これらの結果は、親しい人が周囲にいても、人によってはそれを孤独と感じていることを表しています。
研究者は人の社会的な距離について、「脳は私たちの個人的なつながりをマッピングしている」と述べ、「これは孤独な人が「自分は他人とは違う」といった考えを支持する理由を説明するかもしれない」と付け加えています。
この研究は少数の人だけが参加したものであり、孤独と距離感の因果関係もはっきりとはしていません。
孤独だから全ての他者が同じように見えるのか、それとも他者と距離をとるから孤独を感じるのかについては、今後の研究を待つ必要があります。
スタンフォード大学の心理学の研究員であるアンドレア・コートニー氏は孤独について、「共感力や社会的スキルの欠如、またうつ病などは、孤独を引き起こしたり孤独感を高めたりする」と説明し、それを防ぐには「友人に手を差し伸べ、親密さを再発見し、育てていくべきだ」と話しています。
研究結果はJNeurosciに掲載されました。
双子の研究だと孤独の感じ方には遺伝的な影響もあるみたいだよ
親しそうに見えるだけで実際は孤独を感じている人もいる……
References: CNN