都会に住んでいる人は「見知らぬ人に対して無関心である」というのが通説です。
現代は、隣に住んでいる人の顔さえ知らないのが当たり前の時代であり、この説は一見説得力があるように思われます。
しかし実際には、どこに住んでいるかはほとんど関係ありません。
他人への関心の度合いは、その人の住んでいる地域が、経済的に豊かであるかどうかに左右されます。
裕福な地域に住んでいる人ほど他人に手を差し伸べる
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者は、都市部に住む人の「見知らぬ人に対する関心の度合い」を調べるために、イギリス中の12の都市と12の町の37のポイントで実験を行っています。
実験では、知らない人の頼みにどれだけの人が応えるかを知るために、わざと手紙や物を落としたり、交通量のある道路を横切ったりしました。
全部で1367の実験が行われ、結果は次の通りになりました。
全体としては、47%の人が他人に救いの手を差し伸べたことになります。
しかしこの数字は全ての地域の合計であり、場所によって手助けの割合は大きく異なります。
地域ごとの比較によると、他人を助ける割合が最も高いのは、「経済的に裕福な地域」でした。
一方で、人口密度は他人を助ける割合とは無関係でした。
これは、「都会の人は他人に無関心であり、田舎の人は他人に手を差し伸べる」という従来の説を覆す結果です。
研究者の一人であるユニーバーシティ・カレッジ・ロンドンのエレナ・ズワーナー氏は、「援助が提供されるかどうかは、近隣の富によって異なる」と述べ、より裕福な地域に住む人は、他人への手助けに前向きになると説明しています。
実験は白人女性であるズワーナー氏が単独で行ったものであるため、性別や国籍などの違いによっては、援助を受ける率が変化する可能性もあります。
他人への援助は、自分やコミュニティを危険にさらす行為にもなり得ます。
過去の研究では、食料やシェルターといった基本的な安全が確保されていない場合、人間は小規模なグループで固まる傾向にあることが示されています。
これらのグループにおける援助や協力は、もっぱら近しい隣人に対してのみ行われます。
研究者の一人である二コラ・ライハニ氏は、「他人を助けることは本質的にリスクを伴うものであり、必ずしも費用対効果が高くなるとは限らない」と述べ、今回の研究結果は、人々が見知らぬ人を助ける理由を解明したものではないと強調しています。
ライハニ氏は、他人への手助けをより社会に広げていくには、「人々の生活水準を向上させることが最善の方法かもしれない」と述べています。
研究結果は、Proceedings of the Royal Society Bに掲載されました。
生活がある程度豊かじゃないと他人を助けるのは難しいよね
どこに住んでいても心の余裕だけは持ち続けたい……
Reference: The Guardian