どういうわけか無性にピザを食べたくなるときってありませんか?
普段はまったく食べたいとも思わないのにテレビのCMを見た後や、ポストに投函されたデリバリーピザのチラシを見るとピザのことで頭がいっぱいになったりします。
ある研究によるとそれは異常なことでもないそうで、一言でいうとピザの持つ魔力なのだとか。
そんな大げさな!と思ってしまいますがピザのことを研究した人に敬意を表し、ピザについてちょっと考察してみましょう。
ピザの持つ中毒性――それは完璧な成分の組み合わせ
温かく焼いた生地、塩辛いトマトソース、濃厚なモッツァレラチーズ……これらの絶妙な組み合わせでできたピザを食べることは至福のひと時といっていいほどです。
最近の研究によると、ピザは中毒に関連する食品の中でも最高ランクに位置付けられています。
やめられない止まらない、といった食べ物はほかにもいくつかありますが、どうしてピザはその中でも中毒性が高いのでしょうか。
企業を支援するコンサルティング会社Sensory Spectrumの創設者兼社長、Gail Vance Civille氏は、食べ物に対する感じ方がどのように消費行動に結びつくのかをピザから学ぶことが出来ると語ります。
私は人々が、ほとんどすべての種類のピザを食べているということに魅了されています。
ピザにはトッピングを含めると無数のパターンがありますが、Civille氏は、ピザを食べる人のほとんどがそれらすべてについて好意的であることに驚く、と語ります。
Civille氏は、ピザの主な成分である脂肪、砂糖、塩の組み合わせが偏桃体に影響し、それが脳をハッピーにしているのではないかと考えています。
またPMQ Pizza MagazineのBill DeJournett編集長はピザの魅力についてこう話します。
ピザは生地、チーズ、ソースでできた聖なる三位一体です。
チーズそれ自体の中毒性のみならず、そこにパン生地、ソースと加わることでうまみ成分がより高いレベルに到達すると編集長は述べています。
言われてみると当たり前のことばかりに聞こえてきますが、ピザをここまで真面目に分析しようとしている人がいることにはちょっと驚いてしまいます。
しかしまだほかにもピザの中毒性について研究した人がいます。
人間の感覚について50年以上も研究しているハーバート・ストーン氏は、ピザの消費者への魅力を高めるために国内のピザ企業と協力してきた経験を持ちます。
彼はピザがどうしておいしいのかについてこう述べます。
熱々のピザは最高で中毒性がある。嫌いになる理由なんて一つもない。
様々な“ピザの専門家”たちは口をそろえてその魅力を語っています。
ピザには間違いなくそれだけの魅力と中毒性があります。
しかし主観的な意見だけで決めつけるのは科学的とは言えません。
ピザのうまみを科学する
ピザを構成するそれぞれの食材が、どのように味覚に影響を与えるのかについては様々な意見があります。
先述したCiville氏は、酵母発酵した生地とモッツァレラチーズ、パルメザンチーズの組み合わせにカギがあると指摘します。
パルメザンチーズは酸味と辛みを中和し、よく熱せられたトマトはそのフルーティさでチーズを補完します。
本当においしいピザソースはトマトとニンニク、玉ねぎ、グリーンハーブからなる絶妙のシンフォニーからなります。
またピザの食感もおいしさに関わる大事な要素です。
サクサクとした生地、とろけるチーズ、しっとりとしたソース……それらが適切に作られていれば、互いを干渉することなく口に入れた途端に溶けていく絶妙な組み合わせとなります。
ストーン氏は、ピザの色も、味の認知に影響を与えていると考えています。
紫色に近づくほどの深い赤色のソースこそが、最も消費者の感覚に訴えかける。
確かに見た目は重要かもしれません。
少し焦げた感じの生地に赤いトマト、そこにとろけるチーズと緑野菜のハーモニーが加われば目を逸らすのはなかなか難しい選択ですよね。
ピザは中毒食品ナンバー1
エール大学が開発した「Yale Food Addiction Scale」という、食に対する中毒性を判定するテストにおいて、ピザは上位にランク付けされています。
それによるとピザが含んでいる脂肪、精製炭水化物、塩の組み合わせが消費者に継続的な購買行動をもたらしているとしています。
またミシガン大学の臨床心理学の博士候補であるErica M. Schulte氏によると、ピザを買い求める人は、それが中毒的であると自覚していたとしてもやめることができません。
Schulte氏はピザに含まれるぞれぞれの食材が人々を中毒にさせると述べます。
脂肪と炭水化物の組み合わせが、単独のものよりも高い中毒性を引き起こす要因になっています。
Schulte氏は、ピザのような成分の組み合わせをした食べ物は自然界には存在せず、それが中毒性と大いに関係していると結論づけています。
確かにパン生地だけ、トマトだけ、チーズだけ、といった単独の食材だけならば、中毒を起こすほど夢中になることはないでしょう。
ピザという食べ物は、パン生地を舞台に繰り広げられる食材たちの競演であり、私たちはその素晴らしいハーモニーから目を(もちろん舌も)離すことができません。
それでもピザはおいしい
いろいろな意見はさておき、ピザがおいしい食べ物であることに疑いの余地はありません。
先述したCiville氏によると、ピザの魅力の一つにはそのトッピングがあります。
ペパロニやソーセージは肉感的で噛み応えが増し、野菜を加えた場合にはそこにコントラストが追加されます。すべてのピザは毎回違う魅力を与えてくれます。
デリバリーピザのチラシには本当に多くの種類のメニューがあります。
それらの一つ一つがどれもおいしそうに見えるのは、トッピングの組み合わせが視覚に作用しており、また過去に食べた様々なピザのおいしさを舌が覚えているから、というわけです。
またピザ専門誌の編集長であるDeJournett氏は、ピザの魅力についてこう付け加えています。
ピザは友人や家族と一緒においしい食事を楽しむためのものです。ピザをみんなで囲むことで嬉しさや喜びを感じることができる。これは他の食べ物ではできません。
結局のところピザを最も中毒性のある食べ物にしているのは、この人と人とをつなげることのできる手軽なファーストフードという側面にあるのかもしれません。(もちろん一人で食べてもおいしいことに変わりはないですよ?)
ピザのプロたちの言葉からは、ピザという食べ物に対しての愛情と敬意を感じることができます。
見た目で楽しませ、食材のハーモニーで舌をとろけさせ、そして仲間や家族との時間を喜びに変えることもできる――ピザの美味しさの理由がここにあります。
わーい!ピザだー!かなではこれにするー!
みんなの分もありますからどうぞ
お、これはおいしそうだな
いただきまーす!
ん、みんなで食べるとおいしい……
Reference:Why is pizza so addictive?