東南アジアの熱帯地域を原産とするツマアカスズメバチが、遠く離れたイギリスでも目撃されるようになっています。
ツマアカスズメバチは、体長2センチほどの小柄なスズメバチで、人間に対しては致命的ではないものの、ミツバチにとっては天敵となる外来生物です。
ツマアカスズメバチは近年アメリカにも出没しており、専門家はその原因に、貿易と気候変動を挙げています。
2023年現在、イギリス国内での目撃数は22件で、これは過去6年間の合計を上回っています。
スズメバチのほとんどは、イギリスのケント州で目撃されています。
同地で養蜂業を営むサイモン・スプラトリー氏は、17個あるミツバチの巣箱のうち既に10個がツマアカスズメバチの襲撃を受けたと報告しています。
ツマアカスズメバチはミツバチの巣の外に陣取り、出てきたところを攻撃し、栄養のある部分を切り取って幼虫に与えます。
ミツバチに対抗できる手段はなく、巣は短時間で壊滅に至ります。
スプラトリー氏は、「これらの蜂はここに定着し、あらゆる昆虫、特にミツバチを捕食するでしょう。それが彼らの食料だからです」と述べ、被害がイギリス全土に広がることに懸念を示しました。
ミツバチは蜂蜜をつくるだけでなく、花粉の媒介者としても重要な生き物です。
マルハナバチ保護の専門家である、サセックス大学の生物学者デイブ・ゴールソン氏は、最近の事例は、ツマアカスズメバチがケント州に既に定着している可能性を示すものだと指摘します。
確かなことを言うのは時期尚早ですが、今年はこれまでに9つの巣が発見されており不吉な状況と言えます。たとえ1つでも検出から逃れるようなことになれば、巣が広がるのを阻止するのは不可能になるでしょう。
ゴールソン氏によると、これまでに見つかったツマアカスズメバチの巣は、全て徹底的に破壊されています。
花粉の媒介者として重要な役割をもつマルハナバチ (Bumblebee/Vladimer Shioshvili)
ツマアカスズメバチやイタドリなどの外来種の問題は、単に影響を受ける動植物が減少するというだけにとどまりません。
国連の「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム (IPBES)」が発表した報告書によると、外来種は生物多様性に大きな打撃を与え、動植物の絶滅の60%に関与しています。
外来種は人間の活動によって世界中の地域に持ち込まれており、その数はこれまでに37000種以上に及んでいます。
これらのうち3500種以上は、本来生息していない場所に定着した「侵略的外来種」に分類されています。
また経済的損失も無視できません。
報告書によると、世界で年間4000億ドル以上が外来種によって失われており、その損失は過去10年ごとに4倍ずつ増加しています。
報告書の共著者の1人である英国生態水文センターのヘレン・ロイ教授は、「侵略的外来種による将来の脅威は大きな懸念事項です。現在知られている外来種37000種のうち37%は1970年以降に報告されており、その主な原因は貿易と人間の移動によるものです」と述べ、今後は気候変動がさらに状況を悪化させるだろうと指摘しています。
本来の生息域でない場所で外来種が定着するには、豊富な餌と快適な環境が必要です。
気候変動により世界の温度が上昇しているため、東南アジアの蜂がより北のエリアで目撃されるようになっています。
ツマアカスズメバチは2004年に初めてフランスで目撃され、その際はアジアからの貨物に紛れたのが原因とされました。
しかし今後はより頻繁に、イギリスやヨーロッパ各地で見られるようになると考えられます。
現在イギリス当局は市民に対し、ツマアカスズメバチを見かけたら写真に撮るか、専用のアプリを通して報告してほしいと呼びかけています。
見つかった巣はとりあえず破壊されたみたいだけど、定着するのは時間の問題かもしれないね
それだけ世界の気温が上がっているということだな
References: BBC,The Guardian