1998年に大西洋を泳いで渡ることに成功したフランスの冒険家ベン・ルコント(Ben Lecomte)氏は、千葉県の銚子市からサンフランシスコまで泳ぐ太平洋横断チャレンジを行っています。
2018年6月5日に銚子市をスタートしたルコント氏は、毎日8時間を泳いだ後は、随行している調査船「ディスカバラー号」で食事と睡眠をとるという生活を続けています。
ディスカバラー号はルコント氏の体調管理以外にも、太平洋の水質や汚染の状況を調査するというもう一つの目的があります。
太平洋には各地から集まったゴミの集合地帯である「太平洋ゴミベルト」が存在し、プラスチックを筆頭に、数えきれないほどの人工的なゴミが渦巻いています。
ディスカバラー号が収集した海洋のデータは、NASAやウッズホール海洋科学研究所でくわしく調査されることになっています。
3分に1回プラスチックごみに遭遇、太平洋ゴミベルトの実態
太平洋の海流の循環図。これに沿って大量のごみが漂流している。
ルコント氏と調査チーム一行は12月12日、ハワイのオアフ島に到着し、今回のチャレンジをいったん中断する決断をしました。
太平洋を単独で191日間泳ぎ続けるという記録は前例のないもので、称賛に価する偉業です。
しかしルコント氏とディスカバラー号の科学者たちは、この決定を良いものだとは考えていません。
サンフランシスコまで到達するという目標を中断させたのは、悪天候と、太平洋に広がるゴミの帯である「太平洋ゴミベルト」の存在でした。
太平洋を泳ぐルコント氏は、3分に1回の割合でプラスチックごみに遭遇しました。
太平洋ゴミベルトは、北太平洋からアメリカ西海岸そしてアジアへと、大量のゴミが海流に沿ってぐるぐると周回している海域です。
ゴミのなかでもプラスチックは分解される速度が極めて遅いため、環境と野生生物に蓄積することで生態系に大きな打撃を与えています。
ルコント氏は、プラスチックの海洋汚染の現状を世界に知ってもらうのがチャレンジの目的だったとしつつも、海の汚染が想像以上に進行していることに複雑な心境を明かしました。
時にはクジラと一緒に泳ぐこともありましたが大抵すぐに大量のゴミに遭遇します。3分に1つの割合でプラスチックのゴミを見ました。そのほとんどは私たちが普段使っている家庭のゴミです。
以下は、ルコント氏やディスカバラー号の科学者たちが太平洋で収集したゴミの数々です。
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ペットボトル。
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菓子パンの袋。
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そしてマイクロプラスチックの数々。
マイクロプラスチックが海洋生物に取り込まれると有害物質が残留し、生物多様性に大きな影響を与えます。
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コンビニのレジ袋。
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歯ブラシ。
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プランター。
ルコント氏とディスカバラー号の科学者たちは、ありとあらゆる種類のプラスチックごみを太平洋から収集しています。
海にネットを入れ30分待つだけで、100個以上のプラスチックごみが集まることもありました。
ルコント氏は、プラスチックごみが海を汚染している現状を今後数年のうちに変えることが出来なければ、海はより深刻な事態に陥るだろうと警告しています。
そして自分の使命は、海洋汚染の現実を知らせ、人々が危機感を持って行動するように促すことだと語りました。
海洋汚染やプラスチックに対する意識を変えるようにみんなに訴えたいんだ。使い捨てのプラスチックの利用をやめることがこの地球で生きていく方法なんだよ。

3分に1回……ゴミが邪魔で泳ぐどころじゃない……

プラスチックごみは表面だけじゃなくて水中にも広がっているから、見た目以上に海の汚染は深刻みたいだよ
References:benlecomtetheswim,CNN