地球の資源がなくなる日――アース・オーバーシュート・デイ

自然
© 2019 Earth Overshoot Day. Global Footprint Network.

国際シンクタンク「グローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network-GFN)」は、7月29日が2019年の「アース・オーバーシュート・デイ」であると発表しました。

アース・オーバーシュート・デイはGFNが毎年算出している“記念日”で、これは地球が生産する1年分の資源を人類が使い果たした日を表しています。

去年2018年のアース・オーバーシュート・デイは8月1日――つまりこの1年でさらに3日も早く地球の資源を使いきってしまったことになります。

 

……さて、疑問に残ることがあります。

地球の資源を使ってしまったのなら、1年の残りの期間、私たちはどうやって過ごしているのでしょう?

答えは単純です――人類は将来の資源を前借りして今を生きているのです。

 

人類が必要以上に資源を利用することで、地球は悲鳴をあげ始めています。

温暖化や異常気象は今や珍しい現象ではなくなりました。

これまでにないほどにヒートアップしている地球に住む私たちは、この先の未来をどのように生き抜いていけばよいのでしょうか。

 

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エコロジカル・フットプリント――1年間で人類に必要な地球の数は1.75個

 

グローバル・フットプリント・ネットワークが毎年産出している数値は、「エコロジカル・フットプリント」という考え方がベースになっています。

これはその地域の人たちが一年を過ごすために必要な資源を数値化したものです。

数値には、使用する水、土地、水産資源や森林資源、またそれらが二酸化炭素を吸収する量などが含まれており、そこでの生活を維持するために必要な陸地や水域の面積として表現されます。

この数値が高ければ高いほど、地球が供給する資源が早い段階で底をつくことになります。

フットプリント――すなわち足跡、という言葉にあるように、エコロジカル・フットプリントは、冷淡な表現でいえば“人間がいかに地球を踏みにじっているのか”を表した数値であるとも言えます。

 

1970年代以前は、人類はまだ地球の資源内で1年を送ることができました。

しかしその後の経済発展や人口増加、環境破壊によって人類は地球の資源を食いつぶすようになります。

下のグラフは1970年以降のアース・オーバーシュート・デイを表したものです。

 

© 2019 Earth Overshoot Day. Global Footprint Network.

 

1971年のアース・オーバーシュート・デイは12月20日でした。

1年の終わりまで11日ありますが、おおむね地球が生産できる資源量を1年かけて消費していたということです。

ところがグラフを見ると明らかなように、年々資源枯渇のタイムリミットが短く(グラフでは上昇)なり、1986年から10月に突入、1997年に9月、2005年に8月、そして今年2019年にはとうとう7月の時点で資源を使い果たしてしまったことがわかります。

(GFNは数値を毎年再計算しているため、その結果2018年のアース・オーバーシュート・デイも7月29日に修正されています)

 

人口の爆発的な増加に加え、環境破壊、二酸化炭素の排出や食料問題など、人類は地球を疲弊させる問題を抱えています。

世界各国のエコロジカル・フットプリントの平均から、私たちが現在の生活を維持するために必要な地球の数は「1.75個」となっています。

 

グローバル・フットプリント・ネットワークの創設者であるMathis Wackernagel氏は、「私たちは地球を1つしか持っていません。これは人間の存在を最終的に定義する文脈です」と述べ、この先の地球資源の活用方法について迅速な行動を起こすべきだと促しています。

 

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2050年までに必要な地球の数を“1つ”にする方法

 

その国の人々と同じ生活を世界中の人がしたら、どれだけの数の地球が必要になるのかを示すグラフ。日本人と同じ生活を世界中の人がしたら、地球の数は2.8個必要になる。© 2019 Earth Overshoot Day. Global Footprint Network.

 

グローバル・フットプリント・ネットワークは、将来的に必要な地球の数を“1つ”にするための具体的な方法を5つ挙げています。

地球の持続可能性を改善するための主要分野、それは都市エネルギー食糧惑星、そして人口の5つです。

 

都市

 

2050年までに地球の全人口の70%~80%が都市部に住むと予想されています。

そこで建てられる建物については十分な自然資本があることを確認し、エネルギー効率のよい建物や統合されたゾーニング、コンパクトシティ(効率的で持続可能な都市)、そして公共交通機関の整備などが必要になるでしょう。

特に交通機関については、安全で手ごろな価格の持続可能な公共交通機関へのアクセスが不可欠となります。

なぜなら、現在の二酸化炭素の排出量のうちの17%が個人的な移動手段(自動車など)から生まれているからです。

 

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エネルギー

 

エコロジカル・フットプリントの60%は二酸化炭素で占められています。

二酸化炭素の排出を減らすことは、気候変動に対する最善の処置であるだけでなく、地球の再生可能な天然資源を守ることにも多いに役立ちます。

 

2015年のパリ協定(2030年頃までに温室効果ガスを削減するため各国が取り組む目標についての協定)をクリアするためには、2050年までに二酸化炭素の排出量をゼロにする必要があります

パリ協定では、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2度未満に制限することが盛り込まれました。

しかし現在の温室効果ガスの濃度は、米国海洋大気庁(NOAA)によると493ppmで、パリ協定の目指す数値を達成するためには、この濃度を450ppm以下にする必要があります。

残念なことにNOAAの試算は、このままの状況が続けば毎年2~3ppmの二酸化炭素が増えてしまうことを明らかにしています。

もし2050年までに必要な地球の数を1つにしたいのならば、化石燃料を段階的に廃止しなければならないでしょう。

現在のエコロジカルフットプリントから炭素成分を50%削減できれば、それだけで必要な地球の数が1.7個から1.2個になります

そしてこれは、オーバーシュート・デイを93日、約3か月分後退させることに相当します

 

 

 

食料

 

食肉生産は植物生産と比べ遥かに多くのエネルギーを必要とします。

そうして生産された食料の多くが廃棄されている現実があります。

アメリカでは食料の40%が無駄となっています。

これはペルーとスウェーデンのエコロジカル・フットプリントの合計、またはドイツの数値と匹敵するものです。

 

持続可能な食料供給のためには、一人当たりの食物廃棄量を減らさなければなりません。

2030年までに食品廃棄を半減できれば、オーバーシュート・デイを10日後退させることができます

 

惑星

 

地球の生産性には限りがあり、人類はそれを食い尽くしてきましたが、それでも地球の持つ資源量や生産性を高める方法があります。

現在既に行われている方法としては、熱帯林やマングローブ林の再植林が挙げられます。

これは二酸化炭素を隔離し、生物多様性を高め、ハリケーンや洪水などから地域を守る役割を果たします。

 

また再生可能な農業や漁業を推進していくことも重要です。

土地や海からの資源を何世代にもわたって獲得できるようにすることは、持続可能な未来のためには欠かすことのできない要素です。

 

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人口

 

人口が増えれば増えるほど、一人一人が受け取る地球の資源の量は少なくなります。

人口をこれ以上増やさないためには女性の地位向上が不可欠です

 

女性が家庭、職場、そして地域社会で平等なパートナーとして尊重されると、健康や教育面での達成を含め、家族のためのより良い社会的成果、そして低い生殖率が必ずもたらされます。

1世帯あたりの平均的な子供の数が1人少なくなると、2050年には国連が予想している世界人口――97億人よりも10億人少なくなります。

この割合で家族の人数を減らすことができれば、2050年までにオーバーシュートデイを30日遅らせることができます。

 

「アース・オーバーシュート・デー」(字幕付)

 


 

毎年5日ずつアース・オーバーシュート・デイを後ろにずらすことができれば、2050年には1970年代以前の水準に戻ることができます。

地球はその活動の中で様々な恩恵を私たちにもたらしていますが、人類の消費は地球の生産ペースを遥かに上回っています。

 

最近では異常気象も異常とは言えないほど一般的になってきました。

北極や南極で氷が溶け始めたり、森林破壊による洪水など多くの地域が自然の脅威にさらされています。

 

 

 

アース・オーバーシュート・デイは、私たちに地球や環境への関心を抱かせてくれるいい機会と言えます。

小さなことでも構いません。

こまめに電気を消したり、水道を節約したり、公共交通機関を利用したり――そんなちょっとしたことから始めることが、地球と私たちにとっての大きな第一歩になります。

 

 

 

References:Overshoot Day