人や動物の血を吸うマダニは感染症を媒介します。
病気のなかには致命的なものもあり、山でのハイキングやキャンプはもちろんのこと、草の生えている場所であれば、近くの公園や河川敷でさえ十分な注意が必要です。
マダニの活動時期は限られており、通常は暖かくなると活発になります。
しかし世界の気温は上昇しているため、遭遇する確率は以前よりも増加しています。
アメリカの研究者は、マダニの行動が温度によってどう変わるのかを知るため、興味深い実験を行っています。
マダニは暑い日が続けば続くほど、動物ではなく人間に狙いを定めます。
気温の上昇はマダニの好みを変化させる
カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、温暖な地域に広く分布する「クリイロコイタマダニ (brown dog tick)」を使い、気温の上昇がマダニの行動に与える影響について調査しています。
クリイロコイタマダニは、ライフサイクル全体が屋内で完結する珍しいマダニで、英名が示す通り、主に犬の血を好みます。
しかし人の血が嫌いなわけではなく、刺された場合、致命的な「ロッキー山紅斑熱 (RMSF)」に感染する可能性があります。
実験ではまず、一匹の犬と研究者の一人をそれぞれ箱に閉じ込め、ある程度離した場所に置き、透明なパイプでつなぎました。
その後、パイプの中央部分に開いた入り口から数匹のクリイロコイタマダニを投入し、犬と人間どちらの方向に進むのかを観察しました。
マダニは動物の匂いに敏感で、少し離れた場所からでも、宿主の元に移動することができます。
(Credit: UC Davis )
最初の実験では、マダニは犬のいる箱に向かいました。
この時、研究室の温度は23.3度でした。
次の実験では温度を37.8度にしました。
すると今度は、マダニは犬ではなく人間のいる箱に進んでいきました。
これはクリイロコイタマダニの好みが、温度の上昇によって、犬から人間にシフトしたことを示唆しています。
最終的にクリイロコイタマダニは、温度が高い環境において、犬の2.5倍、人間のいる方向に向かいました。
バックス氏は、「クリイロコイタマダニは、暑くなると人間を好む可能性が高くなる」と説明し、「研究結果は、RMSFの感染により注意を払う必要があることを示している」と述べています。
世界の気温は上昇傾向にあります。
平均気温の上昇はマダニの分布を広げるだけでなく、好みをも変化させてしまいます。
感染症を媒介する生き物の行動が気温によって変わるという事実は、温暖化の問題を抱える人類にとって重要な知識です。
世界の健康を促進する活動を行っている、アメリカ熱帯医学衛生学会のジョエル・ブレマン氏は、「気候変動は非常に急速に進んでいるため、感染症のリスクに対し、より良い準備をする必要がある」と述べています。
日本にいるマダニも感染症を媒介するから注意が必要だね
草の多い場所は特に気をつけよう!
Reference: University of California, Davis