1981年に世界遺産に登録された世界最大のサンゴ礁地帯「グレートバリアリーフ」はその存続を危ぶまれています。
1975年に定められたグレートバリアリーフマリンパーク法により、オーストラリア政府はグレートバリアリーフの環境や保全状況などについて5年ごとにレポートを発行しています。
2019年のレポートによれば、グレートバリアリーフの保全状況および将来の見通しは、これまでの“良くない”から“非常に良くない”に格下げされました。
グレートバリアリーフの存続を揺るがしている主な原因――それは地球温暖化による海水温度の上昇です。
グレートバリアリーフが破壊される主な原因は気候変動
2,300kmにわたるグレートバリアリーフのサンゴ礁地帯は「科学的かつ本質的に重要である」という理由で世界遺産に登録されました。
しかし近年サンゴ礁は温暖な海によって破壊され続けており、ユネスコの世界遺産委員会はグレートバリアリーフを「危険にさらされている」リストに追加することを検討しています。
今回公表された2019年版のレポートは、グレートバリアリーフが依然として存続の危機にさらされており、2009年と2014年のレポートと比較してより一層その脅威が高まっていると報告しています。
レポートはサンゴ礁に対する最大の脅威として気候変動を挙げており、その他にも沿岸での開発や土地の流出、そして人間の活動(違法漁業など)がサンゴ礁に影響を与えているとしました。
2016年と2017年には海水温度の上昇により広範囲にわたってサンゴの「白化現象」が起き、サンゴだけでなくそこに住む多くの海洋生物が一掃されています。
報告書は被害を受けていない地域もあるとしながらも、サンゴ礁への脅威は温暖化だけでなく複数存在しており、将来的な保全のために今すぐ行動する必要があると述べています。
科学者の分析によれば白化現象により1,500kmに及ぶ範囲のサンゴ礁がダメージを受け、新しいサンゴの誕生数も従来に比べて89%も少なくなっています。
サンゴ礁の価値を守っていくためのオーストラリアの施策
Photo by Kyle Taylor / Flickr
報告書は世界の環境保護団体に気候変動に対して迅速な行動を起こすよう促しています。
オーストラリア海洋保護協会のImogen Zethoven氏は、グレートバリアリーフを救う行動の必要性に同意する一方、それには首相を始めとした政府の協力が不可欠であると話し、温室効果ガスの排出量を減らすためにオーストラリアが国際的なリーダーシップを取ることに期待を寄せました。
またレポートを作成しているGBRMPA(グレートバリアリーフ・マリンパークオーソリティー)の主任科学者であるDavid Wachenfeld氏は、「サンゴ礁の問題が気候変動に左右されていることは明確である」と述べ、グレートバリアリーフを回復させるためには可能な限り迅速で強力な行動が必要だと強調しました。
オーストラリア政府は2018年7月から「Reef 2050」と呼ばれる、グレートバリアリーフを今よりも良い状態にしようというプログラムを実施しています。
これは2050年まで続けられる、短期、中期、長期と分けたサンゴ礁の管理プログラムであり、科学者や非政府組織、コミュニティや土地の所有者などと協力してサンゴ礁の回復に向けて具体的に行動していくプログラムです。
プログラムはサンゴ礁を破壊する開発をやめさせ、船舶がサンゴに与える影響を最小限に抑えることを通して水質を改善し生物の多様性を取り戻します。
オーストラリアは10年ごとにグレートバリアリーフの価値を高めていくことを目標にしていて、今後10年間で20億オーストラリアドルがサンゴ礁の保全のために投資される予定になっています。
気候変動だけでなく、人間の直接的または間接的な行動もグレートバリアリーフの存続に大きな影響を与えています。
素晴らしいサンゴ礁の楽園を守り続けていくには、オーストラリアだけでなく地球の全ての人の協力が必要です。