イギリスの王立園芸協会は、道路脇の低木や生け垣などを調査した結果、最も大気汚染に効果がある植物は「コトネアスター」であると報告しています。
多くの品種があるコトネアスターは、インドや中国、タイ、ミャンマーなどが原産の常緑低木で、イギリスでは観賞用および生け垣の植物として人気があります。
現代社会にとって大気汚染は公衆衛生上のリスクであり、脅威をいかに低減するかが今後の大きな課題です。
有害な浮遊粒子をキャッチできるコトネアスターは、環境と人間の健康を改善できる「スーパー植物」です。
交通量の多い場所で最も効果があるコトネアスター
王立園芸協会(RHS)は、生け垣の種類や面積によって大気汚染物質の吸収に違いがあるのかを調べるため、道路脇の様々な植物に堆積している粒子を分析しました。
調査はイギリスのレディングにある複数の道路で行われ、粒子の量とともに交通量も記録されました。
その結果、交通量の激しい場所では、コトネアスターの品種の一つ「Cotoneaster franchetii (フランシェのコトネアスター)」に、最も多くの粒子が付着していることがわかりました。
調査対象となった他の植物には、サンザシやイボタノキがありました。
これらの植物は、小さな粒子を捕らえることはできますが、コトネアスターは、10μm(10マイクロメートル=0.01ミリ)を超える大きな粒子も捕獲しました。
これはコトネアスターの葉が毛深く、複雑な構造をしているためです。
交通量の多い場所では、コトネアスターは他の植物と比べて20%以上、汚染物質の吸収能力が優れていました。
一方、交通量が少ない場所では、植物間の吸収能力に大きな違いは見られませんでした。
コトネアスターに付着していた汚染物質 (Credit: RHS)
適度な厚さをもつ1メートルのコトネアスターは、一台の車が約800キロのドライブで排出する汚染物質を、わずか7日で吸収できます。
現在自動車業界では急速な電化が進んでいますが、世界にはいまだ、多くの汚染にさらされている地域が存在します。
交通量が激しく汚染の対策がとられていない地域では、コトネアスターの植樹が、環境を改善する選択肢の一つになる可能性があります。
調査を行ったRHSの主任研究員ティヤナ・ブラヌサ氏は、「荒くて毛深い葉を持つコトネアスターは、交通量の多い主要な都市道路では最も効果的である」と述べています。
RHSが2056人を対象に行ったアンケート調査では、3人に1人が大気汚染の影響を受けていると回答しています。
しかしこうした人たちのほとんどが、具体的な措置を講じていません。
RHSは、どう行動していいか分からない人に対し、自分の庭を管理することを勧めています。
RHSの科学ディレクターであるアリステア・グリフィス氏は、「例えばツタの壁は建物の冷却に優れており、サンザシとイボタノキは、激しい夏の降雨を和らげ局地的な洪水を減らすのに役立つ」と述べ、これらの植物を植えることで、「気候変動との戦いに大きな違いをもたらすことができる」と強調しています。
研究結果はMDPIに掲載されました。
コトネアスターは日本には自生してないみたい
毛がいっぱい生えてる葉は汚染物質を捕まえやすいんだね
Reference: RHS