中央アメリカのベリーズの沖合にはぽっかりと空いた穴「グレートブルーホール」があります。
1971年に海中探検家のジャック・クストー氏が探検してから有名となり、ダイバーの人気スポットにもなっています。
全長およそ300m、深さ125mの大きな穴は、現地の人に怪物の寝床として恐れられてきました。
科学技術が発達した現在でもその全容はつかめていません。
そんな中ヴァージングループの創設者で大富豪でもあるリチャード・ブランソン氏は去年の12月、ベリーズ政府や専門家と共にブルーホールの内部を探検しました。
ブランソン氏は、まことしやかにささやかれている海の怪物について言及しています。
海にとっての怪物……それは気候変動とプラスチック
2018年の12月、ブランソン氏と潜水艇のパイロットであるエリカ・バーグマン氏、そしてジャック・クストー氏の孫であるファビアン・クストー氏で構成されたチームは、ブルーホールの底めがけて探査を行いました。
ブルーホール自体はベリーズ以外にも多くが存在していて、それはかつて洞窟や鍾乳洞だったものが何らかの自然環境の変動により海底に沈んだものとされています。
今回のグレートブルーホールの探検は、昨今の環境変化や海洋汚染の影響が大きなきっかけとなっています。
ブランソン氏はベリーズの首相と話し合いを設け、今後2030年までに、すくなくとも全ての海の30%を守っていく必要があることを確認しています。
「アクアティカ」と名付けられた潜水艇は、バーグマン氏の慎重な操縦で10分かけてブルーホールの底まで潜航しました。
乗組員は、海底に向かう途中、巨大な鍾乳洞の壁が圧倒的な美しさで迫ってきたと証言しています。
ブランソン氏は、この神秘的で不気味な穴にまつわる言い伝えを知っていました。
探検から戻った後ブランソン氏は、その穴に潜むモンスターについて次のように書きました。
本当のモンスターは気候変動――そしてプラスチックです。悲しいことに私たちはブルーホールの底でペットボトルを発見しました。これは海にとって本当の意味での惨劇です。
ブランソン氏は「プラスチックの使用を減らさなければ、環境への悪影響を減らすことはできないだろう」と述べています。
今回の調査には、グレートブルーホールをコンピューターで再現することも含まれていました。
科学者と地質学者は今後、撮影したデータを使って3次元レンダリングを作成する予定です。
作られたグレートブルーホールのマップはベリーズ政府に提供され、将来の保全活動に役立てられるということです。
世界の海に潜むプラスチックという名の怪物
海底でのプラスチックの発見は今回が初めてというわけではありません。
2017年には、マリアナ海溝の底で捕獲した海洋生物の全てに、プラスチックを摂取した痕跡が認められたという報告があります。
また2018年にもマリアナ海溝の底を映した映像に、ビニール袋を含むプラスチックが見つかっています。
一部の科学者は、海底が大量のプラスチックで埋まっていると指摘します。
この海底にある「Hadal Zone(ヘイダルゾーン)」と呼ばれるプラスチック貯蔵庫は、世界中の海の底で環境と生態系に影響を及ぼし続けます。
近年世界各地で、プラスチックの利用を制限したり禁止する動きが出てきています。
プラスチックはほぼ分解されない性質を持つため、人間の目で確認できなくなったとしても、微細なマイクロプラスチックとして海に漂い続けます。
中国の科学者たちが最近発表した研究では、マリアナ海溝の底で採取した1リットルの水の中から2,000個ものマイクロプラスチックが検出されています。
古くから怪物の住む場所として恐れられていたグレートブルーホールにいたのが、実はプラスチックという怪物だった、なんていう現実はあまり楽しい話ではありません。
グレートブルーホールの底で見つかったプラスチックは、人々に、海とそこに住む生物に対してもっと意識を持つよう促しています。
Source:virgin.com,mnn