アメリカではミツバチを含む花粉媒介者のおかげで、年間500億ドル相当の作物が生産されています。
多くの農場ではミツバチの飼育箱が設けられ計画的な受粉が行われていますが、実際には野生に生息する他の種類のミツバチも生産に大きな影響を与えています。
アメリカとカナダの研究者グループは、花粉の媒介を必要とする主要な作物について広範な調査を行い、野生のミツバチの農業への貢献度を分析しています。
地球の人口が増え続けるなか、安定した食料生産を維持していくには、野生のミツバチの存在が欠かせません。
野生のミツバチは作物の収穫量を左右する
米国ラトガース大学の研究者を中心としたグループは、アメリカとカナダの131の農場で、花粉媒介者の受粉の実態について調査をしています。
農場で生産されているのはリンゴ、ブルーベリー、サクランボ、タルトチェリー、アーモンド、スイカ、カボチャの7品目で、これらは全て昆虫による受粉が必要な種です。
研究では飼育箱から放たれたミツバチが受粉をした回数や頻度などと共に、野生のミツバチの受粉についても記録していきました。
集められたデータは、受粉と作物の生産量との関係性を表す統計モデルの作成に使われました。
全ての農場の分析結果は、リンゴ、サクランボ、タルトチェリー、ブルーベリーの4品目で、花粉媒介者が制限されている可能性を示唆しました。
これは、野生のミツバチを適切に利用すれば収穫量の増加に結び付くことを意味します。
(Renee Grayson/Flickr)
観察では、野生のミツバチが多くの品種にとって重要な存在であることが示されました。
例えばカボチャは、受粉のほとんどが野生のミツバチによって行われており、タルトチェリーやリンゴでも3分の1が野生でした。
また野生のミツバチが運ぶ花粉の量は、飼育されているミツバチよりも多く、花の種類によっては1.5~2倍もの違いがありました。
ブルーベリーやスイカ、アーモンドではあまり野生のミツバチが見られませんでしたが、これは周囲の環境が影響している可能性があります。
研究者の一人であるラトガース大学のレイチェル・ウィンフリー教授は、「多くの作物の受粉は制限されている」と説明し、「野生のミツバチの生息地の管理や、数を増やす取り組みなどによって受粉レベルを上げれば、作物の生産量を増やすことができる」と指摘しています。
これまで野生のミツバチの受粉への貢献度は、管理されているミツバチに比べてそれほど高くはないと考えられてきました。
しかし新しい研究は、アメリカだけでも4,000種いる野生のミツバチの重要性を明らかにしました。
野生のミツバチによる受粉は今回調査された7品目だけでも、年間で15億ドル以上の価値を生み出しています。
研究者は全ての結果から、野生のミツバチは、管理されているミツバチと同等かそれ以上の受粉能力を持っており、食料生産にとって欠かせない存在であると結論づけています。
研究結果はProceedings of the Royal Society B: Biological Sciencesに掲載されました。
野生のミツバチがいるかどうかで収穫量が変わってくるんだね
おいしいカボチャが食べられるのもミツバチのおかげなんだよー
References: Phys.org,ScienceAlert