エベレストで次々と発見される登山家の遺体――温暖化によって雪や氷が溶けたのが原因

自然
Image by skeeze from Pixabay

エベレストで氷が溶け始めています。

地球温暖化の影響によるものと考えられていますが、これによりかつて登山中に命を落とした登山家の遺体が次々発見される事態が起き始めています。

ネパール登山協会の元会長であるAng Tshering Sherpa氏は「気候変動と地球温暖化の影響により、雪と氷河が急速に溶け遺体が露出し発見されるようになっている」とBBCニュースに語っています。

 

記録によると、最初にエベレストでの死者が確認された1922年以降、200人以上の登山家が死亡していてそのほとんどは氷河や雪の中に埋もれたままです。

Ang Tshering Sherpa氏の会社は2008年以来、登山家の遺体を7体発見し地上に降ろしましたが、近年ますます埋もれたままでいた古い遺体が発見されているということです。

 

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ネパール国立山岳ガイド協会の役員Sobit Kunwar氏は、氷河が溶け登山家の遺体が発見されることがますます一般的になってきており、それが業務に支障をきたし始めていると述べます。

そして「事態が本当に悪化していることを心配している」と語り、それに関する情報を広く知ってもらうよう呼びかけています。

ネパール国立山岳ガイド協会の調査によると、ネパールの氷河は毎年1mずつ融解しています。

会計係のTenzeeng Sherpa氏は、遺体を見つけてもその大部分は地上に降ろすことができないと述べ、遺体に関する当局の行動が欠如していることを嘆きました。

 

ネパールの法律では遺体を扱う際に政府機関が関与する必要がありますが、政府は山で発見された遺体を適切に処理する方法についていまだ具体的な方法を持っていません。

また高所から地上に遺体を降ろすのには多額の費用が掛かります。

山岳ガイド協会によるとその額は4万~8万ドルだということです。

 


 

現在エベレストだけでなく世界中の氷河も溶け始めています。

アメリカ国立雪氷データセンターによると、20世紀初頭以来氷河は急速に減少してきました。

アメリカのグレイシャー国立公園は1910年に制定されて以降、150あった氷河が現在は30以下に減少しています。

 

グレイシャー国立公園のグリネル氷河:1938年

同1998年

同2009年

 

近年の世界的な気温上昇がもたらす氷河の減少は、科学者の予想をはるかに超えた深刻なものです。

氷河の減少は、長い間その中に閉じ込められていたものを露出させます。

エベレストではそれは登山家の遺体でしたが、一部の科学者たちはずっと昔に閉じ込められた古代のウイルスを解き放つことになるかもしれないと警戒しています。

 

2015年に発表された研究は、北極の永久凍土に3万年前のウイルスが今も存在していることを明らかにしています。

そして気温の上昇が続けばこれらの古代の病原体が世界に広がるおそれがあると警告しました。

 

 

 


 

温暖化の進む速度を遅らせようと各国が協力し始めていますが、発展途上国との間の溝もありなかなか難しいのが現状です。

何万年もの間氷の中で眠っていた“何か”が目覚めてしまう前に早急な対策が望まれています。

 

 

References:BusinessInsider